2018年に見た舞台

髑髏城の七人 season月の千秋楽からもうすぐ1年が経ってしまいます。正直、思い出を反芻しているうちに1年経ってしまった感覚なのですが、それ以降も色々な舞台を見たので、記憶があるうちに簡単にでもメモしておこうと思いました。2019年は見たらすぐ書くぞ…。

2018年2月までの「髑髏城の七人 season月」についてのまとめはこちら。
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2018年3月〜5月「修羅天魔〜髑髏城の七人season極〜」

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下弦の熱冷めやらぬ頃に見たので、ステアラのオープニングの回転が月と逆なことにショックを受けたのを覚えてます…。
極楽太夫に蘭兵衛と捨之介の役割までが合わさったような天海祐希演じる「極楽」はかっこよかったし、あの広い会場を一瞬で掴む視線の強さは生でみれてよかった。ただーうーん!?と思うところもなくはなく、特に古田さんがなんか疲れてる感じに見えてしまったのが心配だった。複数回観たけど動くのしんどそう…と思ってしまった。
一番好きだったのは猛突(原慎一郎さん)の歌のシーンでした。

3月「舞台 弱虫ペダル ザ・キングダム」

イレギュラーが私にとっての初2.5舞台で、それ以降ペダステだけは新作があるたびに見に行っています。「弱虫ペダル」という作品は小野田坂道という一見平凡なように見えて実は天才(自覚はない)である少年が主人公なんですけど、個人的には、もう一人の主人公は彼を自転車に誘う、一見完璧なように見えて脆いところもある、今泉くんなのではないかと思っています。なぜなら、物語を通してずっと成長が描かれているのは彼なんですよね。彼には本当に弱点が多い。今回のキングダムにおいても、彼が精神的なもろさを露呈してしまうある場面が描かれるわけですけど、それは「スカシ」なんて呼ばれてるのにその実ひどく思春期の青年である今泉くんの魅力でもあるわけで…とか考えながらとにかく楽しみました。
あと手嶋役の鯨井さんはほんとうにいい声ですごい。泉田役の河原田さんとともに新世代ペダステの精神的支柱でいてほしいです。

6月「舞台「刀剣乱舞」悲伝 結の目の不如帰」(ライビュ)

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舞台刀剣乱舞(刀ステ)はずっとライビュでしかみれてないのですが、これは下弦後の鈴木拡樹さんが観れるというのもあってめちゃくちゃ期待して見に行きました。結果、鈴木天の余韻をまっったく感じない「三日月宗近」だったのが流石の鈴木拡樹さんでした。
映画刀剣乱舞もすごく良くて、鈴木さんの三日月はいくら見ても見飽きないんですが、やはり舞台と映像は違っていて、この時のことを思い出すと、まずやはり腰を落として踏み込む所作が毎回きれいだったな、と言うことが思い出されます。それから玉城裕規さん演じる小烏丸の体重を感じさせない存在感もすごかった…。
刀剣での推しキャラは光忠なんですけども、このお話では本丸のムードメーカー的な光忠が三日月を疑いつつも疑いたくはないと葛藤し、最終的には……というのがとても切なかったです。
物語としては私の好きなタイムリープものに近かったと思うのですが、千秋楽のライビュだけを見たのではその構図を十二分に味わえなかったっぽい、と言うところだけ残念でした。

7月「メタルマクベスdisc1」

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思えば2018年はステアラに捧げた一年でもあったんですよね…。と言うわけで極の次のステアラは「メタルマクベス」でした。
直前にゲキシネで初演版を見てから臨んだのですが、見てまず思ったのはステアラの使い方がこれにて完成した…!っていうことでした。冒頭シーンででかいモニターが立ち上がってきたところでもう5億点が出ていた。初演版ももちろんよかったのですが橋本さとし濱田めぐみとのランダムスター夫妻はとにかく初日から最強で、その上生演奏で、舞台でありライブでありアトラクションでもある…って感じのすごい舞台でした。カーテンコールで冠さんが嬉しそうに場内を見渡していたのがとても印象的でした。
ただ所々、私の中の倫理委員会みたいなのが発動してしまうところもあり、これは宮藤官九郎脚本との相性なのかな…と思ったりもした。(特にローマン関連)
千秋楽の日のアンコールのライブも最高に楽しかったな。橋本さとしさんが大好きになりました。

8月「スサノオと美琴〜古事記〜」

下弦後の廣瀬さんを見たくてチケットを取った1日限りの公演。
主人公の少年が古事記の世界に迷い込んで、スサノオと一緒に旅をする…と言う物語。
生オーケストラだし、有名な声楽家の方が出てたり、バレエがあったりと、なんだかすごく盛り沢山な舞台で、これが1日限り?何かの予算消化なのか?とか考えてしまうくらいとにかくお金がかかっていた気がする。そして著名な出演者が多いからか、旅をしながら出会うそれぞれのソロパートが積み重ねられていく構成になっていた。
……と色々謎だったことが印象に残っているのだけど、舞台はなかなかよかったと思う。お目当の廣瀬さんもとてもよかった。蘭兵衛とは全く違う、暴れん坊みたいな役なのも新鮮だったし、剣舞が観れたのもよかった。
よかったなと言う気持ちと謎だなと言う気持ちの間で狐につままれたような気持ちになった舞台でした。

8月「ミュージカル GHOST」

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私の推しの1人である秋元才加ちゃんと、月髑髏(上弦)で好きになった平間壮一さんが共演する…!ということで告知を聞いた時から楽しみにしていた舞台。とっっても良かったです。
少しずつ形を変えるセットの作りも面白く、登場人物の立ち位置が縦方向にばらけることで決して広くはない舞台上を効果的に使っていた。物語はサム(浦井健治)とモリー秋元才加)とカールの三角関係(恋愛的な意味でなく)を中心に描かれ、物語序盤でサムが「ゴースト」になるわけですが、亡くなってしまった恋人を思うモリーの、でも決して依存しているわけではない強さも良かったし、ゴーストになってなお前向きに感じるサムの陽性は浦井さんならではの魅力だった。特に良かったのは平間壮一さん演じるカール。罪を犯す人物なのだけど、日常の延長線上で落とし穴に落ちるようにして罪に転んでしまったという印象で、確実に自業自得ではあるのだけれど、だからこその切なさがあった。「あれは誤解だった」と歌う場面の表情の切なさが強烈に印象に残っています。できればもっと見たかった舞台…。

9月「メタルマクベスdisc2」

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disc1とどのくらい変わるのかな?と思っていましたが脚本は基本的に同じ。でも演者が違うとこんなに違うお話になるんだな…!という面白さは月髑髏的なところがあるかもしれません。
尾上松也大原櫻子という、disc1よりぐっと若いランダムスター夫妻で、ランダムスターが完全に夫人の尻に敷かれてる感が出てたのがよかったです。ただ、ランダムスターの友であるエクスプローラー役が岡本健一さんになったことで、この2人の関係性が謎になったdisc2でもありました。
あとメタルマクベスのメタル要素のかなりの部分を担っていた冠さんポジを若手演歌歌手徳永ゆうきさんが担当していたのも面白いdisc2でした。たまたまTVで徳永ゆうきさんがLemonを歌ってるのを見て、何このめちゃくちゃ歌が上手い人→メタマクに出てたじゃん!となったのも面白かった。

10月「カレフォン」

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廣瀬さんの裸足がたくさんみれる舞台でした。廣瀬さんの役は幽霊なので、セットの中を白い服を着て歩き回ったり座ったりする…というシーンがかなりあったんですが、段差のあるセットなので、高さのあるところにしばらく座ってたりするんですよね。なので双眼鏡で見てると足の裏まで見えてしまって、いや…こんな、足の裏とかガン見しちゃだめ…と思ったりしたんですが休憩時間に「足の裏ばっかりみちゃった」って一緒にいった友人に話したら「わたしもww」って言ってたのでやはりあそこが見所だったと思います。
もちろん他にも見どころはありましたし役者さんは皆良かったと思うんですけど、少人数キャストでセリフ詰め込みで時系列が行ったり来たりするので、どこを描きたい話なのか、私にはよくわからなかったな…というのが正直なところです。

11月「メタルマクベスdisc3」

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3作の中では一番「わかりやすいメタルマクベス」だったと思う。
今回は浦井健治長澤まさみのランダムスター夫妻なんだけど、浦井さんが一番「綺麗は汚い ただし俺以外!」と思ってそうな調子に乗った感と尻に敷かれてる感のハイブリッドで、確かにこのランダムスターなら道を踏み外しそうだな〜、でも憎めないな〜、って納得できてしまうところがとても好きだった。
千秋楽の大はしゃぎも楽しくて、浦井さんは本当に新感線が好きなんだなってニコニコしてしまいました。

ただ「メタルマクベス」については、初演〜disc3まで見て、全てに共通するラストシーンが最後までしっくりこなかったなというのが正直なところです。具体的に言うと、グレコの「これが悪魔の右腕だ!」というセリフなんだけど、それまで特に右腕に注目するストーリーではないのと(メロイックサインのことかな?)、なぜそれをグレコが言うのか? というのに毎回引っかかってしまったんですよね。まあマクベスのラストがそうなのかもしれない→読んでない私が悪い、ってなるのでいつかマクベスを読まなくては…。

12月「日本の歴史」

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秋元才加ちゃんが出るということでFC先行から頑張ってみたにも関わらずチケットが取れなくて泣いていたところ、2枚取れてた友人が連れて行ってくれました。天使…。そしてこれが本当に素晴らしい舞台だった。世田谷パブリックシアターのこぢんまりとした真っ白な舞台上に楽器と大きな雲が浮かび、その下で7名のキャストがアメリカに渡ってきたある1家の歴史と、1700年に及ぶ日本の歴史に重ねて描き出していく。
7名のキャストが入れ替わり立ち替わり様々な歴史上の人物として現れる様子にはとてもワクワクしてしまったし、7名の魅力がフルに描き出されていて全員大好きになってしまった。
特に良かったのは、川平慈英さん演じる平徳子(清盛の娘)の悲哀と、中井貴一さんと香取慎吾さんが演じた頼朝と義経のくだりです。歴史物ってあまりみないけど頼朝が義経を拒絶しなければならなかった理由をああやって描くのはあまりみたことがなかった気がする。
川平慈英さんが歌う「なんとかならない時でも、なんとかなるもんさ〜」って歌を思い出すたびに元気が出る。東5ホール ぬ51a本当に創意工夫にあふれたチャーミングな舞台だったので、ぜひ円盤化して欲しいです。


2018年は多分これで全部だと思います。
特に好きだったのは(月髑髏はもちろんとして)ゴーストと日本の歴史。そう思える舞台に推しが出ているというのは本当に嬉しいことでした。
すでに忘れかけている部分があるので、今年こそは本当に素早く感想を書いておきたい…。

ベーコンライフのすすめ

昨年末「今年買ってよかったもの」というタグが流行っていた。
いいねをもらった数だけ買ってよかったものをあげるというタグだったのに、他に何があったっけ、なんて考えているうちに年を越してしまい、続きはまた年末、という雰囲気になってしまったのだけど、

挙げ忘れていたもののなかに、やはりこれだけは!というものがあり、往生際悪くここに書いておくことにした。
それは成城石井の「自家製ベーコン」である。
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きっかけはカリカリベーコンだった。
私は、いわゆるホテルの朝食に出されるような「カリカリしたベーコン」が大好きだ。それは私のイメージする幸福な朝食を具現化した存在と言っても過言ではない。
しかしスーパーで買うベーコンというのはどうもカリカリしにくい(ものが多い)。
水を入れて焼くと良いとかいう裏技めいたものもあるけれど、おそらく脂身の多いベーコンの方がカリカリしやすい…などという理由はあるのだと思う。
しかし成城石井のベーコンは違う、理想的なカリカリしやすさなのだというのをtwitterで見て買ってみたのだけれど、これが本当においしかったのだ。

焼けばあっという間に、確実にカリカリする。その寸前の、カリカリしたところもあるし、そうでないところもあるくらいの状態におかれたベーコンの刹那を半熟の黄身に絡めて食べるのは最高に幸せだ。
ここ数年、目玉焼きなんて作ろうと思ったことがないのに(目玉焼きほど朝食にしか食べないメニューも少ないのではないだろうか)ベーコンが尽きるまで目玉焼きを連続で食してしまったほどだ。

そして幾度目かのお代わりベーコンをしに成城石井に赴いてふと、その隣にブロックベーコンもあることに気がついた。
冬だし、ポトフを作るのもいいかもしれない。そう思いつき、1本1000円超(100gで大体480円くらい)という、なかなか贅沢な買い物をした。よく考えたら肉でもそんな金額のものはあんまり買わないけれど、これは確実にその金額以上の価値があったと思う。

白菜1/4をざく切りにし鍋に敷き詰めてじゃがいもにんじんきのこ、そしてブロックベーコン半分とオニオンスープ*1コンソメ代わりに入れ、少しだけ水を加えて15分程度煮込む。
ポトフにおけるブロックベーコンの役割はとにかく出汁だ。こんな雑な作り方でも、ベーコンがおいしいというだけで上等な味がする。最後にちょっといいコショウを振ったらさらに完璧だ。
野菜もたくさんとれるし、おいしいベーコンのおかげで特別感もあるしで、入れる野菜をマイナーチェンジしたり、トマト缶やレモン鍋の素を入れたりして味のパターンを変えながら、12月末から1月にかけては毎晩のようにポトフ(ポトフなのか?)を食べていた気がする。

ひとつの食材にこんなにハマると言うのもなかなかないことで、まだ全然飽きる気配もないのだけれど、ポトフはやはり冬の食べ物だ。もうしばらくブロックベーコンライフを楽しみながら、春夏のベーコン暮らしの計画を立てたいなと思っている。

2019年1月の読書

昨年末に、2019年に新刊が発売されるという告知*1があった「十二国記」シリーズを私は読んだことがなかったのだけれど、告知の後のTLの様子を見ていて羨ましくなったため、とりあえず刊行順で「魔性の子」から「東の海神」までを購入して読み始めた。
それが暮れのことで、「魔性の子」を読み終えてすぐ、できたばかりのアップリンク吉祥寺で「牯嶺街少年殺人事件」を見た。
どちらも、「特別」な存在と接することで、自分も「特別」なのだと思っていた主人公が、自分はその世界には行けないことを知る物語という点で、重なるところがあるような気がした。

正月に実家に帰省する際には「月の影 影の海」を持って行ったのだけれど、暇であっという間に読み終えてしまいもう1冊持って来ればよかった、と思ったところから止まらなくなり、1月の6日には「東の海神 西の滄海」にたどり着いていた。つまりだいたい1日1冊のペースである。本を読むのが遅い方な自分にとってはあまりないペースだった。
続きを注文して、届くまでの間には「風が強く吹いている」を読んだ。
「風が強く吹いている」は現在放送中のアニメ版がとても面白かったためようやく手に取ったのだけれど、読み始めた瞬間に、なぜもっと早く読まなかったんだろうと思うほど好きな小説だった。

「その瞬間、清瀬は悟った。もしもこの世に、幸福や美や善なるものがあるとしたら。俺にとってそれは、この男の形をしているのだ。」

冒頭も冒頭の場面だが、この一文を読んだ時に確実に好きだと思ったし、実際とても面白かった。
アニメ版と異なる点も多々あるのだけれど、原作を読んで改めて、アニメはアニメで2クールで展開するための、適切な補足がされていると感じた。調べてみれば脚本の喜安浩平さんは「桐島、部活やめるってよ」や「幕が上がる」の脚本を手がけていた方で、今後この方の作品にも注目していこう、と心に決めた。

その後「風の万里 黎明の空」から「丕緒の鳥」までは本当にあっという間だった。感想をTwitterに書きながら読んでいたのだけれど、「図南の翼」で「利広は麒麟なのでは?」「でも血が嫌いなはずだからもしかして敵なのか?」なんて的外れなことを書いていたのに突っ込まないでいてくれた方々は本当に優しいと思う。
1月なのでいくつか新年会もあり、そのたびに「十二国記」の面白さについてひとしきり話さないと気が済まない状態になっており、そんな私の話を聞いてくれた友人たちもまた優しいと思う。
正月休みは何をしていたか、という話題で友人が「一般参賀に行った」と話し出した際、そこから陽子が赤楽と元号を定めたことへのエモさを語る流れにもってったのは、我ながらちょっと無理やりだったなと反省している。

十二国記は、架空の国の物語でありながら時折、鮮明にその世界が見えるような気がしてしまう物語だった。作者には一体どこまでが見えているのだろうと何度でも感動するし、その目を借りてもっといろんな話を聞かせてほしい、と思う。
自分が海客として十二国記の世界に行くとしたら、と想像してみたりもするけれど、その度に「魔性の子」に描かれた「行けない人」の視点を思い出してしまうという構図も、とても気に入った。
なんにせよ、新刊が出るというこのタイミングに間に合うことができたのは本当に幸せなことだ。

そんなわけで2019年の1月は自分比でかなり多くの本を読むことができた。
この調子で、今年はたくさん本を読む年にしたいな、と思う。特にまだ読んでいなかった「名作」に手を出していきたいと思っている。

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

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風が強く吹いている (新潮文庫)

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牯嶺街少年殺人事件 [Blu-ray]

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2018年に見た映画ベスト10!

先日、定期的に映画を見る会をしている友人2人と毎年恒例の「今年のベスト映画」を発表しあう会をやりました。私が自信満々で「これは3人ともかぶるでしょう!」なんて思っていた映画が全く被らなかったり、私以外の2人が被っている映画を見ていなくて悔しかったりしつつ、1作発表して行くごとにあれこれ感想を話すのがとても楽しくて、映画って本当にいいものですね、と思ったりしました。
映画を見る楽しさの一つにそうやって他の人の感想を聞くことがあるけれど、それと同時に年間ベストを振り返りながら、今年の自分が何にグッときていたのかとか、自分の好みの傾向だとかを考えてみるのもまた好きな作業だな、と思います。
今年映画館で見た新作映画はおそらく40本でしたが、その中で特にグッときたものについて考えていくと、多くは「失われたもの」についての話だったかな…と思います。

10位「ヘレディタリー/継承」

今年、というか、私が今まで見たホラー映画で一番怖かったのがこのヘレディタリーだと思う。アトロク評にもあったけれど、見ている間はこれが「作り物」であることを忘れて本当に恐怖していた。けれどやはり見終えてから思い返されるのは、中盤(時間の流れがよく思い出せないんだけど前半だったのかもしれない)にある、とある事件についてだった。取り返せない過ちを犯してしまった、その事実と向き合えない夜の長さ。
もう1回映画館で見ろって言われたら絶対嫌だけど、この映画を見たことはずっと忘れないような気がする。

9位「レディ・バード

女の子同士の友情ものとしてもよかったし、同時期に「アイ・トーニャ」「フロリダ・プロジェクト」「レディ・バード」を立て続けに見て、「ここから出ていけない状態」ということについて考えたのも思い出深い。
個人的には、年末に親に付き合って教会(親がクリスチャンなので)に行き、レディ・バードのラストシーンを思い出したりしたことでベストに入れたくなりました。

8位「スリー・ビルボード

善でもなく悪とも言い切れない主人公の描かれ方がとても好きだった。この私は絶滅すべきなのか、いやそうではない、と立ち上がる物語という意味では1位にあげる映画と重なるところもあったと思っています。

スリー・ビルボード - イチニクス遊覧日記

7位「ゴッズ・オウン・カントリー」(※DVD鑑賞)

貸していただいた英語版のDVDでの鑑賞なので、セリフの意味が全て聞き取れたわけではない…というのを加味しての順位ですが、2月に拡大公開になるとのことなので、ぜひそこで字幕付きを見たいと思っています。
最初全く応援できな買った主人公が拘泥ののちに人と関わるということを知る物語。

6位「オーシャンズ8」

最初に書いた友人たちとの会話でも話したんだけど、冒頭のデビーの万引きシーンについては割と冷めてしまったものの、見ているうちにデビーはこの8人の中では最もぶれてる人なんだなと思うようになりました。
そんな彼女が仲間たちの力を借りてでかいことをやるお話。8人それぞれの魅力をちゃんとクローズアップして、「脇役」扱いせずに描くところが最高に好きでした。

8月に見た映画 - イチニクス遊覧日記

5位「アイ・トーニャ」

トーニャ・ハーティングの事件がこんな話だったなんて知らなかった…という驚きもあったんだけど、手をつけられない「炎上」状態にありながら、それでも立ち向かうことを諦めない様を描いたあのメイクアップシーンは、今まで見た映画の中でも特に好きな場面の一つになりました。
孤立無援状態の女性を描いた話という意味では「スリー・ビルボード」とも重なるし、女性がメイクするのは立ち向かうための儀式なんですよ…というのはオーシャンズ8にも繋がるところ。

4位「君の名前で僕を呼んで

間違いなく今年一番聞いたアルバムはこの映画のサントラでした。
音楽も映像も素晴らしく美しく、繊細な感情のやり取りが画面から伝わってくるような、贅沢な映画だったと思います。
GOCが真夜中から夜明け、だとしたらCMBYNは朝から夕暮れへというイメージ。

3位「若おかみは小学生!

今年はアニメ映画をあまり見れていないんですが、これは映画館で観れて本当に良かった。失われてしまったものを抱えながら、抱えたまま生きていくために一歩踏み出すようなお話だったと思う。
「若おかみは小学生!」 - イチニクス遊覧日記

2位「ボヘミアン・ラプソディー

この映画における「失われてしまったもの」は、主人公でもあるフレディその人だ。見る人の多くはおそらく彼がどのようにして亡くなったかを知っているわけで、だからこそ、多少の事実の改変は、この映画をブライアン・メイロジャー・テイラーがどのように作りたかったかということの現れなのだと思う。
そしてQueenの音楽の素晴らしさがこの映画によって再評価(というより若い世代の人にとっては再発見、なのかもしれない)されているということが本当に素晴らしいことだなと思います。
特に良かったのはもちろんラストのライブエイドシーンなんですけど、アイドルファンとして、演者がファンをどのように見ているのか、ということを垣間見せてくれたような気がしたことにグッときたし、ラストフレディがバンドメンバーを振り返る場面を入れてくれたことが本当に嬉しかった。
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1位「勝手にふるえてろ

公開されたのは昨年ですが、私は今年見たので今年のベストです。
本当に今年1年はこの映画について考える1年になったような気がする。漫画作品で言えば「こいいじ」や「あげくの果てのカノン」と同じく、終わったはずの初恋が追いかけてくる話であり、それが自分の中の聖域のようになってしまっている状態という意味では「スリー・ビルボード」とも重なるところがあったと思う。
そうやって、他人から見たら取るに足らなかったり、馬鹿げていたりする感情が、その人にとっては世界を揺るがしてしまうほどの大事である、という物語にグッときた1年だった。

勝手にふるえてろ [DVD]

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勝手にふるえてろを見て打ちのめされていた時期に、考えを整理しようと思ってあまり向き合わずにいた部分について口にしたりしたら、まんまとそれが追いかけてくるような出来事があり今年の前半は少々落ち込んだりしたこともあったのだけど、
そんな時に元気づけてくれるのがまた映画だったりもするので、物語を摂取するということは少なくとも自分の人生には必要不可欠なことだなと思った1年でした。
でも特に秋頃の映画が全然見れていないので追って追いついていきたいなと思います!
来年もたくさん映画が見れますように!

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怖い話

例えばふと気が緩んだ瞬間に、普段はしないようなミスをする。けれど疲れているし、眠たいし、これはきっと些細なことだから、と目を逸らしているうちにいつの間にか、それは火種となって延焼を続けている。自分の預かり知らぬところで。

先日読んだ「静かに、ねぇ、静かに」に収録されていた「奥さん、犬は大丈夫だよね?」もそういった話だった。ネットショッピング依存症の女が、目を逸らし続ける話。あと1、2秒といったギリギリまで彼女は目を逸らし続け、一体どこまで逸らし続けられるのか、読んでいるこちらはハラハラして、いっそ逃げ切ってくれと願いかけたところで物語は終わる。
先日見た「ヘレディタリー/継承」というホラー映画にもそういった場面があった。ホラーは苦手なので見ている間はとにかくびっくりしたくないということに集中していたのだけれど、思い返してみると一番怖いのはあのシーンだった。とんでもないことをしでかしてしまった後、それを確認せず、とりあえず家に帰って、とりあえず布団に潜り込む長い夜。

冷静な人は、しでかした何かの気配に怯えて眠るよりも、状況に対処した方がずっといい、というかもしれない。
けれど、本当に取り返しのつかない、今自分が持っているすべてと引き換えにしても償えないものかもしれないものが突然にやってきて、すぐに冷静になどなれるのだろうか。こんなことなら普段から注意深く、誠実に、清く正しく生きるべきだった。そんなことを思ってももう遅い。

例えば、ベランダの手すりに植木鉢を置く。普段ならそんなことはしないのに、手についた泥を落とそうとして、ほんの一瞬だからとそこに置く。
鉢を片付けたら洗濯物を干して、昼食を食べたら買い物に行こう。そんなことを考えながら振り返り、そこにあったはずの植木鉢がなくなっていることに気づいたら、
すぐに向こう側をのぞくことができるだろうか。

そういった、日常の底が抜けるようなゾッとする感じは、おそらく「怖い話」の典型の一つなのだろう。
そして、自分にはどうかそんな瞬間がやってきませんようにと願うくせに、つい思い返してはゾッとするのをやめられない。
「怖い話」の魅力というのはそういうところにあるのかもしれないなと思った。

ところで、なんで今年は冬になってホラー映画がたくさん公開されているんでしょうか。
ちょっと忙しくなると盲点ができがちなので、ついつい怖いことばかり考えてしまう。
ヘレディタリーは本当に怖かったです。

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに