犬猫

監督/脚本:井口奈己
ちょっと前にtroubleさんのコメント欄*1で教えていただいてから(感謝!)俄然気になりだしたので、ついに見てみました。

犬猫 [DVD]

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仲がいいんだか悪いんだか、な、幼なじみの女の子2人の同居生活。
その二人の空気感に、思うところがいっぱいあって、とても面白かった。
ヨーコは内弁慶というか、つっけんどんなんだけど小心者なタイプ。スズは自由奔放に見えて、心を開くチャンスを逃しちゃうタイプ、かな。でもそれは表面的なとこで、実は二人ともとても良く似ている。
あの2人が「1人で」いるシーンのなんと魅力的なことか。そして2人でいるときには「1人1人」であれるのに、男の子が入ると、途端にバランスが崩れる。
でもそのバランスの崩れ方が、彼女たちの関係性を際立たせる効果的なさざ波になっているのだなぁと思いました。
最初の方の場面でヨーコちゃんが「嫌なこととかムカつくこととかあると、なんか怪我するんだよね」*2と友達のアベちゃんに言う場面がある。その後しばらくして「ヨーコちゃんが機嫌わるい時はおなかすいてるときか眠いときだよね」とアベちゃんは言う。でも、それは違うかも、と思った。ヨーコちゃんは、嫌なことやムカつくことについて話したかったのだきっと。というか私がヨーコだったらきっとそうだ。
そんな風に、私はこの映画を見ているあいだ中ずっと、私の中のヨーコとスズを、重ねあわせて考えていたような気がする。
ともかく、ヨーコちゃんがスズ以外の人と話する場面ではいつもそのような「言いたくて言えないこと」があるのに、スズといるときにはそれがないような気がする。でもスズは簡単に内面を見せない。つかみどころが無い。異性がどうの、より、ヨーコにとってはそのスズの「余裕」に「負けた」気がしていたのではないかな。そして、ラストで立場が逆転して、ちょっとスッキリしたのかもしれない。でも、スズだってきっと負けたかったんだ。もっとだらしなく、人目を気にせずがむしゃらに振る舞いたかったんじゃないかな。
そして2人はまた絶妙な居心地の悪さの中でのびのびとして、やはり魅力的に見えるのだ。
それはとってもリアルだけど、同時にファンタジーでもある。それに比べると、あの西島さん演じる男性とかコンビニの男の子の感じはひたすらリアルに見えるなーと思いました。でもそれはきっと、わたしが男じゃないからなんだろう。
なんかうまく言えないですけど、とても面白かったです。こういう映画がもっと見たい。
公式サイト → http://www.inuneko-movie.com/

*1:http://d.hatena.ne.jp/./trouble/20060315#p1

*2:記憶で書いてるので正しくないかも

 帰り道と断片とBGM

会社を出て駅に向かう途中、横断歩道を渡る時に、タクシーを運転しているおじいさんと目が合った。人と目が合うと、ちょっとだけ時間がとまった感じがするんだけど、その時もそのまま立ち止まって、i-podのイヤホンを耳に突っ込んだ。LとRはきちんと確認。おっけい。「KU〜KI」が流れる中を歩いて改札を通り、銀色の電車に乗り込むと、透き通って見える、窓の外は真っ暗。乗換えの駅に降りると、youとyeahを重ねてる感じが若いとかまで考えてた妄想が中断されて、雑踏を歩く不自由さに意識が音から離れる。雑踏を歩いているときは、いつも向かいから自分が歩いてくるような気分になって歩きにくい、けど、乗り換えの改札でタイミングよく「サマー記念日」のチャッチャチャッという手拍子が流れて救われた気分になる。そう、なにもかもそろってる。足取りも軽く再び電車に乗り込んで本を開いて、読みかけだった「ナポリ」の話に戻る。きゅうにスパゲッティが食べたくなる。ヤングコーンの入ったアーリオオーリオ。あれはどこで食べたんだっけ。ああそうだ、今日はビールでも買ってかえろう、そんでビール飲みながらビデオでも見よう、頭の中がサァーっとするあの感じ、なんて「自問自答」で、ちょっと頭がサァーっとなる。でも、ナポリの次の話は訳者と相性があわないのか、いきなり読みにくくつっかえてしまい、同時にちょっと嫌なこと思い出したら「オーライ」と声がして「どっかにいこー」が始まった。どっかいにいこーと言いつつ着いたのは最寄り駅なんだけど、家までの道を歩く途中には、桜の大木が2本あって、ひと方はとにかく枝を広く傘のように広げていて包容力のあるタイプで、もうひと方はとにかく上へ上へという向上心のあるタイプなのだった。なんて思ったのは今日が初めてだけど、同じソメイヨシノで年の頃も同じくらいなのに、全くタイプが違うのが面白い。「砂漠に咲いた花」が流れて、ああもうすぐキセルのライブだ、と携帯のスケジュールを確認する。ゆるされるように、黒い空の前を白い花びらが飛んでく。光ってるみたいでしんとする。着地点はねぇ、と言うのは何回聞いてもぐっとくる「KIMOCHI」。そう、それで、あの唯一性の話。重なることはないけど、内側から描き出された輪郭に、外側から触れることでその内側を思い描ける、ということはやっぱあるかもしれないとか思う。なんのことやらだけど、興味がある。なんでだろう、なんて考えていたらいつの間にかコンビニで、おじさんにあんまんをもらった。ごちそうさま。そんで言葉があふれでた帰り道も終る頃、流れてたのは「thankyou for the music」だった。ありがとう音楽。

 SLAM DUNK(その4/17〜21巻)

スラムダンク (17) (ジャンプ・コミックス)

スラムダンク (17) (ジャンプ・コミックス)

17巻。陵南/海南戦いは王者、海南に軍配をあげたが、牧と仙道の戦いは仙道がねじ伏せるという展開で幕。そして戦いは陵南VS翔北因縁の対決へ。
ただ、翔北には安西先生がいない。陵南の報われなかった隠し玉、福田がとても良いです。そして田岡監督の語りによって試合が解説されていくため、終盤までもしかして、という不安が付きまとう。
また、こうしたスポーツものの漫画というのは、その選手の回想シーンがあったらしばらくはその選手の活躍が保証されるような「お約束」があるので(そりゃ仕方ないと思うけど)陵南選手の回想が入るたびに、感情移入はしつつやきもきする。
中でも桜木の空回りは不安材料なのだけど、ここでもやっぱり褒められてのびる子。試合の後半には田岡監督の「不安材料」が明かされ、あわやの大ピンチを迎えるのだけど、ここでも読者の盲点を突く展開というか、あの翔北バスケ部の母的存在木暮君の名場面です。走馬灯のように駆け巡るこれまでの風景。そして『バスケットが好きなんだ…』という気持ち。ようやく巡ってきた見せ場だけに感動的だ。
そしてゴリの外したボールをゴールに押し込み、それでも試合に集中している桜木の姿に、しみじみと成長を感じ取ったりもする。世代交代を伺わせる幕切れ。

#167の表紙にあるオールスター戦が見たい。

スラムダンク (21) (ジャンプ・コミックス)

スラムダンク (21) (ジャンプ・コミックス)