「私日和」1巻/羽柴麻央

羽柴麻央さんの連作短編集、第1巻。とてもよかったです。
それぞれの主人公に感情移入できるポイントがたくさんあったせいか、やたらぐっと来てしまいました。全体的に、友だち関係と恋愛がほどよいバランスで丁寧に描かれているのも好みです。「女の子の食卓」や「ラウンダバウト」などの作品が好きな人に特におすすめしたいと思った。
連作なので、少しだけ登場人物につながりもあって、今後彼女たちが脇役として登場することもあるのかなーと思うとそれも楽しみ。

私日和 1 (マーガレットコミックス)

私日和 1 (マーガレットコミックス)

第1話は美術部に入部してからずっと気になっていた、いつも1人でいる女の子と仲良くなるお話。仲良くしたいと思っているのに、皆が彼女の悪口を言ってる場で何も言えなかったことを後悔する主人公に、「弱点を克服していくことが生きるということだ、て、何かの本で言ってた」って返す都築さんがすてきです。
途中から「シーン2」と区切られて都築さんのお話になるんだけど、これがまた超絶甘酸っぱくてよかったな。
第2話は、片思いしてる男の子に片思いするお話。片思いするお話は好きなくせに、結局最後ちゃんと報われてほしい、って思ってる自分の甘さにぐさぐさきて(以下略)。出会いのシーンとラストシーンを重ねた告白の台詞が好きです。
第3話は、とてもかわいい友だちと、自分が周囲から比較されてることに気づいて避けるようになってしまうお話。これもなんていうか名前が似てるとことかトラウマ直球で参った。自分が自分でよかったなんて思うの、自力じゃなかなか難しいんだよなーとか改めて思う。あー、うん。でもこれラストの順序が違ったらまったく違うお話になっていたと思う。
たぶんこの漫画家さんの描くお話は優しいお話が多い。でも単に「いい話」っていうわけでもなく、結末の印象がちゃんと1作づつ異なるのがこの人の丁寧さだと思います。
最後に読みきりが一篇収録されてるんだけど、これもよかったな。よかったばっかりいってるけど、よかった。この最後の短編を読んで改めて、この人の描くキャラクターは男の子も女の子もほんと魅力的だなと感じました。

関連

ちょっと前に読んだ「イロドリミドリ」もよかった。
http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20090722/p1

 よくかんがえること

気がつくとロシアンルーレットで勝つ方法とか、手錠の鍵がなくなってしまったときの対処法とかダイイングメッセージの残し方などを考えてたりするのはきっと私だけじゃないと思うのですが、これほど実生活で役にたたなそうな懸案事項もないよなと思います。
とはいえ、その想像もワンパターンで、例えばロシアンルーレットの必勝法については、何かで読んだ「音だけでシリンダーの回転数を数えられる」とかそういう特殊能力が設定されている場合しか思いつかない。結局は必勝法がないってところが、よく物語に登場する理由なんだろうなあ、とか。だからそれをはじめるまでの駆け引きが面白いんだろうなあ、とか。あと全ロシアンルーレット場面での「最後の1発まで残る」確率がどのくらいなのかも気になる。個人的には最初の一発があたりの方がいいなー、とか。
それから、手錠をかけられるのは鍵がなくなるフラグのようなものだと思いますが、映画とかでよく真ん中の鎖だけ切るっていうのを見るけど、あれ最終的にはどうしてるの? 鍵ないのにどうやってはずすの? とか。手錠って確か、締めれば締めるほど締まるんですよね。何を言ってるかわからないと思いますが、外そうとするとさらに外れなくなる、という描写をよく読むので、ペンチかなにかで切ってもらうにしても、手首と手錠との間にペンチを挟み込める隙間すらなくなっちゃったらどうしよう、とかいらぬ心配をしています。
ダイイングメッセージについては、いつも思い浮かべるのがアスファルトの上に倒れてる自分が血文字を書こうとしている場面なんだけど、結局指が痛いってところで思考停止してしまう。ダイイングなのに。
あと全然関係ないけどドアを蹴破る場面で足がドアに刺さったまんまになっちゃったらすごく痛いだろうなーという想像もよくします。テレビとかで木製のベニヤばりのうっすいドアとか蹴破るの見るけど、蹴った反動でこけて足にささって大変、とか考えてるだけでふくらはぎが痛い。