「おもいでだま」1巻/荒井ママレ

おもいでだま 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

おもいでだま 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

記憶をキャンディの型で取り出し、それを舐めるとまた記憶を取り戻すことができる…という技術を中心にしたお話。取り出したキャンディは自分以外の人が舐めても記憶を見ることができるっていう設定が新鮮でした。
これは、忘れたい記憶でも、見方を変えると発見がある、という物語を描くのにはすごくうまい設定だなと思います。その「記憶を失う→取り戻そうとする」だけのパターンでもサトラレ式にしばらく繰り返せそうなのに、毎回新しいパターンの「客」を描き、その背景でこの技術を扱う側の中心人物として描かれている女性の物語が進行している…という所は構成がうまいなと思いました。
特によかったのは、亡くなる前に記憶を取り出し、そのキャンディを遺言として仲違いした息子たちに(舐めさせて)見せる…というお話。これはあったらいいな、と思う遺言方法でもあるのですが、その反面で、他人の記憶を見るって、なんだか自分が自分でなくなってしまいそうな気持ちもします。
ひとつもったいないなと思うのは、物語中でその「キャンディ」のことがタイトルでもある「おもいでだま」と呼ばれているわけではないところ。そこは統一してもよかったんじゃないかなと思います。

記憶をテーマにしたお話の中でも特に、映画「ワンダフルライフ」や「エターナルサンシャイン」に近いところを感じた作品でした。
続きがとても楽しみです。

 「喰う寝るふたり住むふたり」1巻/日暮キノコ

喰う寝るふたり 住むふたり  1(ゼノンコミックス)

喰う寝るふたり 住むふたり 1(ゼノンコミックス)

同棲カップルの日常を、男性側、女性側それぞれから描くという連作シリーズ。
これ、連載では女性視点男性視点セットで掲載されているそうで、それはすごく描くのが大変そう…って思うんですが、この形だからこそとても面白い作品になっていると思う。
連載のなかで数回、番外編的に他者視点が入ったりする作品は多いと思うんだけど、こうやって同じ出来事を二人の視点から見れるって、すごく贅沢。
特に1巻最後の、お互いのプレゼントを選ぶ話は面白かったな。作者のコメントに「ゲーム「街」を思い出しながら描いた」ってあったのもなるほどって思いました。
ちなみに作者の日暮キノコさんは古谷実さんのアシスタントをされていた方だそうです。
この作品しか読んだことないけど、古谷実さんぽさは全然なくて、しいていえば後味のいい「モテキ」(別にモテキが後味悪いという意味ではないんだけど…)のような雰囲気かなと思います。2巻が楽しみ。