カフカと九龍城

審判 (カフカ小説全集)大図解九龍城
夢の中で、私は待合室にいた。
何を待っているのかもわからず、周囲を見回してみる。
そこにいる多くの人は、なんだかやつれた労働者風の人たちで、木製のベンチにぎっしりと、窮屈そうに座っていた。室内は人いきれのせいか、もやがかかった様である。窓も曇っていて、木の陰がかろうじてうかがえる程度。とにかくすごく長い時間をそこで過ごす、という夢で、少し疲れる。
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目が覚めて、あそこはどこだったろうと思い、カフカの「審判」に出てくる場所だ、と気付いた。

それは長い廊下で、そこから、立てつけのわるい扉をいくつか通って、屋根裏のそれぞれの小部屋に通じているのだった。

「審判」は平凡な銀行員ヨーゼフ・Kがある日いわれの無い告発を受け、突然逮捕されてしまうというお話。私はカフカの作品の中でこれが一番読みやすく、面白いと思います。
読んだのがずいぶん昔なので、記憶が曖昧になっているけれど、審理委員会にたどり着くまでの、とくに建物内の描写が印象に残っている。
そして当時の私が、そのイメージに重ねていたのが(今思えば)九龍城であり、今日の夢にでてきた労働者風の人たちも今思えばアジア人だった。

今は亡き、「東洋の魔窟」として知られた九龍城。「そこには三百棟以上の建物が無秩序に林立し、内部を這う路地はまるで迷路のようだった」・・・ってその言葉のイメージだけでもう無条件に惹かれてしまう。悪いイメージは多々あれど、その混沌に惹かれる人は多いし、私自身、路地裏の配線とか町の模型とかパノラマ図なんかが好きになったのは、九龍城や香港の町並みが切欠だと思う。ブレードランナーとかの刷り込みが先だったのかもしれないけれど、とにかくああいうアジア的スラム街とかの描写にはすぐ反応してしまう。まあ、あんまり声を大にしていう話ではないけど。

九龍城といえば、2004年に復刊された「大図解 九龍城」はいつか買いたいと思ってるうちにまた品切れになってしまうかもしれないから、早く買わなきゃな。この前立ち読みした「くそゲ−図鑑」(?そんな感じの本)で見事一位の称号すら与えられてしまっていた「クーロンズゲート」も、未だにファンは多いみたいだし、私だってもしあれが一枚のディスクに収まってたら今でもやってると思うな。(いつかリメイクして欲しい)。
夢のはなしからずいぶん逸れてしまったけれど、往々にして、夢っていうのはそういう妄想から派生するものなのかもしれない、ということで、今日のはたぶん、昨日飲んでいる時に、「香港行きたいね」という話をしていたからだと思う。むりやり。

追記

そういえばJoseph Kというバンドがいたな、と思ってちょっと検索してみたら、日本語のページが全然ひっかかりませんでした。私も名前に惹かれて聞いてみたことがあるくらいで、そんな好きな感じじゃなかったんだけど、人気ないんでしょうか? 一応私の感想としては、70年代風味を漂わせつつ実は80年代的な、ちょっと泥臭い感じのバンドだったと記憶しています。しかしほんと試聴したくらいなのであてになりません。知っているのは、やっぱりカフカが好きで、「ヨーゼフK」というバンド名をつけたらしいということくらい。確かにバンド名はかっこいい。