「煙か土か食い物」文庫版について

煙か土か食い物 (講談社文庫)煙か土か食い物 (講談社ノベルス)
舞城王太郎作品をすごーいすごーいと言って皆におすすめしまくっていたのも今は昔。すっかり有名人になってしまわれて、嬉しいような寂しい様な気分になる。いや実は新作が出るたんびに私はちょっと寂しくなってしまってるのかもしれない。といいつつ「好き好き大好き超愛してる」以降は読んでいないのですが。
煙か土か食い物」に始まって怒濤の勢いで繰り広げられる奈津川家シリーズは本当に大好きだった。おもしろーいと思って夢中で読んだ。一応「世界は密室でできている」までを奈津川、というか福井シリーズだとして、なんかもう福井弁が出てこないのが寂しい。
文中にあれこれ出てきた「作者本人が好きなものいろいろ」、特にエドワード・ホッパーとか「ピコーン」に出てきた「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の一節とか、ほくそ笑みながら読むのも楽しかったけど、いまはもうそういうのもなくなってきた感じ。
そしてとうとう出た文庫版舞城王太郎
これ、装幀Veiaじゃないのでは?賛否両論ありつつも、講談社刊行ものについてはVeia装幀を貫き続けてきたのに。まあ文庫だからと言ってしまえばそれまでなんですが、「これが噂のMAIJOだ」ってコピーもすごいなぁ。昔SWITCHに掲載されてた舞城さんの書いた奈津川兄弟イラストがとても良かったので、あれで装幀やってくれたら良かったのになーとか思った。というかノベルスの装幀で良かったじゃん。あ、蛇革加工が無理だったのかな・・・。

ともかくこの本はとても面白い。なんといっても、その文章のリズムに身を任せる楽しさと魅力的なキャラクターの魅力だけで読む価値はあると思います。ただ、暴力描写とかが苦手な人にはおすすめしません。そしてメフィスト(というかファウスト)系に慣れていない人なら、推理小説だとは思わないほうが良いかもしれない。

いつかまた奈津川シリーズを書いて欲しいという願いをこめつつ、もしもまだ舞城作品を読んでなくて読もうかなと言う人がいたらぜひこの「煙か土か食い物」から読まれることをおすすめします。