CHERRY BLOSSOM FRONT 345

懲りずに初心者初見感想です。

ラーメンズ第11回定期公演「CHERRY BLOSSOM FRONT 345」 [VHS]
2002年3~5月にかけて東京、大阪、札幌で行われた、ラーメンズの第11回定期公演
【収録作品】
本人不在
エアメールの嘘
レストランそれぞれ
怪傑ギリジン
小説家らしき存在
マーチンとプーチン
蒲田の行進曲

素晴らしいです。

あると思ってた枠の外へ軽々と飛び越えていくのを見ている様な、そこには初めから枠なんて無かったんだということを思い知らされる様な、そんな作品でした。
1つ1つの脚本がぴったりすっきり美しく構成されていて、特に、二人の演技力に驚かされる作品が多かったです。8〜10回公演までの漢字三部作と比べると、より演劇に近い作品が増えているという印象。
「本人不在」「エアメールの嘘」は特に二人の自然体の演技力が光る作品。
「レストランそれぞれ」でのどんどん空間が広がって行く感じも新鮮で、また新たな技が完成したんだなという感じ。
ギリジンやマーチンとプーチンといったシリーズものも楽しい。片桐さん(怪傑ギリジン)VS笑いをこらえる小林さんという構図もさらに威力をまして、もはや拷問。こらえられない。片桐さんのオン(キャラクターものなど)とオフ(自然な演技)の使い分け方もすごく生きていると思います。
「蒲田の行進曲」もまた演技が素晴らしい。このカタルシス。盛り上げ方。展開の意外性。舞台全体を覆っている仕掛け。やられっぱなしです。ちょっと「ピンポン」のスマイルとペコを思いだしました。
そして今回最も印象に残ったのが「小説家らしき存在」。これもなんだか新しい世界が完成したような作品でした。小林さんが大江健三郎にちょっと似ていた。物まねが上手い小林さんのことだから、誰かをモチーフにしているのかな、とも思ったけど、思い付きません。とにかく、これは演技者・小林賢太郎ここにあり、という迫力のある作品でした。構成も素晴らしい。名作といわれる小説のような贅沢な一幕でした。
全体的な感想としては、たぶんこの「CHERRY BLOSSOM FRONT 345」は、ラーメンズの1つの完成形かつ新しい一歩なんじゃないかなと思う。ラーメンズラーメンズたる由縁である個性や可能性が咲き誇る満開の桜のような舞台。

見終わった後の感想はこんな感じ。

「ああ、彼はついに全世界を部屋にして、そして、そのドアを開け放ったのだ」
大島弓子ロストハウス (白泉社文庫)」より

ちょっとセンチすぎるでしょうか。