サマリア

ichinics2005-03-11
キム・ギドク監督作品。ポスターで見た二人の女の子がかわいかったのでとても楽しみにしていた。
物語は三部構成になっていて、ヨジンとチェヨンという二人の女の子を中心としたお話は第一部のみ。なので女の子を描いた物語だと思って行くと少々裏切られるかもしれない。


【以下ネタばれ】

三部構成の第一部が援助交際をするチェヨンと、見張り役としてチェヨンに付き添いながら、彼女を止められないことを歯がゆく感じているヨジンの物語。チェヨンの笑顔はほんとにかわいくて、それを見守るヨジンのまなざしにも力があり、とてもうまくいった配役だと思う。チェヨンは「リリィシュシュのすべて」での蒼井優ちゃんの役回りを彷佛とさせる。というか監督が意識してないわけがないと思う。二人が学校の中を歩いている描写では「花とアリス」にもとてもよく似た構図が出てくる。
しかし、少女を描写することにおいては岩井俊二監督の方が上手だなと感じた。チェヨンの内面が描かれないことはともかく、ヨジンがチェヨンに惹かれている、という部分の描写がこの第一部以外で急速に弱まっていき、「なぜチェヨンに惹かれているのか」という理由も特に描かれることがないせいか、あまり胸にせまってこない。
第二部は、チェヨンの罪滅ぼしの為に、彼女と援助交際をした男たちにお金を返していくヨジンの父親の視点で描かれる。(ここでちょっと疑問なのが、その罪というのがヨジンのものなのかチェヨンのものなのかはっきりしないとこ)ヨジンの父は警察官で、ホテル街で事件の調査をしている時に偶然、男とホテルの一室にいる娘を見つけ、その相手の男たちに報復していく過程がメインになっている。はじめは男たちを退けるくらいだったのが、次にはストーカー行為を働いた末に自殺に追い込み、果てには自ら手を下してしまう。その静かに気が狂ってくかんじが恐ろしく迫力があった。しかし正直こんな父親がいたら恐い。まず娘と話しあえよ、と思ってしまう。
第三部はその父親と娘のロードムービー。亡くなった母親の墓参りに行くところから始まるが、もういつ何がおこるかわからなくてはらはらする。ラスト寸前のヨジンの夢のシーンが私の想像したラストだったんだけど、そうはいかずに父親と娘は別々の道を歩むことになる。
ラスト、ヨジンが初めて運転する車をあやつってよろよろと進むシーンは印象に残る。
自らをもてあましながらも少女は1人で生きていく、というお話だったということなんだろうけど、そこに行き着くまでの「少女たちは何故、そうしたのか」という所を語るのは避けている様な感じがしたので、これはやはり中年男性(ヨジンの父親)の視点がメインなんだろう。