職業欄はエスパー/森達也

フジテレビのドキュメンタリー番組、NONFIXにて放送された「職業欄はエスパー」を渋谷UPLINKにて見てきました。前に書いた番組がもしかしたらこれだったのではという期待もちょっとあったんだけど、やっぱり違う作品だった。でも面白かったです。
内容は、超能力者として生きる道を選んだ、秋山眞人、堤裕司、清田益章の姿を中心に追ったドキュメンタリー。見ていてまず感じたのは、超能力者といってもやっぱり普通の人なんだなあということ。酒も飲むし、くだらない冗談も言うし、忘年会とかで「もうテレビのバラエティとか出るの止めようぜ」とか相談しつつ、お互いの能力の話になるととても嬉しそうな顔になる姿は、まるで町内会か大学のサークルのようだった。
超能力というと、なんとなく万能の力のようなイメージがあるけど、実はそうではなくて、ほんとに体調とか状況とか集中力とかに左右される、「力」の一種に過ぎないんだろう。例えば火事場の馬鹿力のような。
そして、その力は彼らにとってあまりにも当然のこと過ぎるので、それを受け入れられないで生きるということはとても窮屈だろうなと思った。そうやって自分の言葉が信用されないということに対面しながら生きてきたからこそ、彼らは少し屈折しているようにも見える。
秋山さんが話すUFOの話のとこらへんで(超能力とUFOが同じ土俵で話されることだとはじめて知った)もしかしたら、超能力とかじゃなくても、ひとに話してみたらうさんくさがられるようなことを自分も信じてるんじゃないかなーとか考えた。少なくとも子どもの頃は、押し入れの奥にナルニアがあると思ってたし、そういう信じ方とはまた違うんだろうか。
 *
それでもたぶん、超能力はあるんだろう。私がそう思うのは、もちろん彼らがカメラの前で見せた能力のリアルさにもあるけれど、それ以上に彼らが自らの力を当然あるものとして信じて生きているのが伝わってきたからだ。そして、堤さんが公園で手品の練習をしている際に周囲によってくる子どもたちのように、へーそんなことできるのか!すごいね!という反応でいいじゃんと思う。うさんくさくても、見たものは信じるよ、と番組のなかにでてきた外国人も言ってたよ。
最後に挿入された森さんの一言にはびっくりしたけど、その後に続くモノローグを聴いてるうちに、理解出来ないからと言って切り捨てるのではなくて、ちゃんと向かいあっている人の言葉を聞こうとしている森さんの姿勢は信頼出来ると思った。
アップリンクでのTV作品上映会は明後日で終了。出来れば他のもみたいんだけど、行けるかどうかはまだ微妙。
 *
ちなみにアップリンクに行ったのはそういえば森達也さんの「A」以来で、いつの間にか(最近ぽいけど)場所が移転していて驚きました。帰り道、ふらっと入った古本屋にいろいろ欲しい本があって嬉しくなった。けど、考えてみれば給料日前なので泣く泣く一冊だけにして、あとは後日買いにこようと思った。