残暑/鬼頭莫宏

鬼頭莫宏短編集 残暑 (IKKI COMICS)
鬼頭莫宏さんの短編集。「なるたる」で毎号2話掲載とかしてたので、すごく多作な人というイメージがあったのだけど、冒頭に収録されているデビュー作が1987年というので驚いた。しかも少年サンデー。てっきりアフタヌーン出身だと思ってた。
読んだことのある短編も多かったけれど、「なるたる」と連載中の「ぼくらの」のイメージが強くて、鬼頭莫宏さんといえば、現代SF、というイメージだった私には、こうやって短編をまとめて読んだことで別の側面も知ることができたような気もして、とても新鮮だった。すごく上手くなってるんだなというのが一冊でわかる。
なので、私は最終話である第7話「ポチの場所」が1番好きだったのだけど、この作品以外はすべて、根底に「男の子が見た、女の子の不思議さ」みたいなものが描かれた作品だったように思う。少女の神秘性とか、あやうい感じとか、つかみどころがないところとか。「ポチの場所」だけは対象が女の子ではないけれど、全体的に、男の子が持っている理想とか繊細さみたいなものが、まっすぐに出ている作品だったと思う。男の子だったことがないのでわからないけども。
語弊があるかもしれませんが、こういう青い部分を経て、それを捨てることなく、今、例えば「ぼくらの」で描いているような人の醜いところまでを描くようになったと言うのはファンにとっては嬉しいことだなと思った。