埋もれ木

ichinics2005-06-27

小栗康平監督の9年ぶりの新作。シネマライズにて。
といっても私は小栗監督の作品はみたことがなくて、この「埋もれ木」はチラシと予告編の美しさにつられて見に行きました。だから小栗監督の作風などはわからないんだけども、この「埋もれ木」は、私にはちょっと入り込めない物語だった。
ストーリーは、主人公の"まち"が友人とお話作りをはじめるところから始まり、物語と現実が交錯していく、という感じなのだとおもいますが、まずどの風景が現実なのかわからなかった。はじめに"まち"達がいた場所はたぶん現実なのだと思うけれど、そこと同じくらいメインにでてくるマーケットという場所が、どうしても同じ町にあるように思えなかった。その辺りから混乱してしまったのが入り込めない原因だったように思う。映画の中での立ち位置を見つけられないまんまでおわってしまったというか。ずっと夢をみてたような感じ。
でも、この映画はそれで良いようにも思います。とにかく映像がとてもきれいで、特に光が美しかった。人物はくっきりと浮かび上がり、丁寧に焼かれた写真のようでした。この映像を味わうだけでも、見に行って良かったと思う。
それから、ラストの埋もれ木のシーン、紙灯籠のシーンも、期待どおりに美しかった。見とれる様な美しさなのに、どことなく恐ろしいような気もする。埋もれ木というものが何なのかは知らなかったのだけど、映画をみてなるほどと思った。ラストはモーニングで連載されていた「暁星記」を思いだす世界でした。
冒頭に笹舟を流すシーンがあって、その笹舟のカットが何回か入るのだけど、ちょうど今日「家守綺譚」を読んでいて、ぴったりの台詞があったので引用してみます。

水があれば人はそれを最大限利用し、遠くまで行きたいと願う。transportation -- transition
transition !

《p136「貝母」より》