愛についてのキンゼイ・レポート

ichinics2005-09-09

ビル・コンドン監督/リーアム・ニーソン主演
非常に厳格で保守的な父親に育てられた主人公が、やがて生物学という学問に巡り合い、選択し、その末に当時(50年前)のアメリカではタブーとされていた人間の性生活についての研究をはじめる、という実際にあった物語。
キンゼイ博士の父親をはじめとする、当時の社会的モラル(「ファスナーは破廉恥だ!」なんてのや、迷信みたいなのも多くてちょっと笑ってしまう)にはやっぱり違和感があって、今見ると、そのハードルを越えてくっていうキンゼイ博士の勇気は相当なものだったんだと思うけど、でもそういう「意義」じゃなくて個人的、かつ学問的な興味から端を発して、積極的に巻き込まれてくとこがまたこのキンゼイ博士の(というかこの映画の)面白いとこなんだと思います。
個人的には、ちょっとそれはどうなんだろってシーンも多かったし、人々の告白はあまりにも積極的なものばかりに感じられて、もしかすると、抑圧されてるからこその情熱(もしくは好奇心)っていうのもあるのかもしれないなんて思った。もちろん、人はそれぞれ違うものであり、多数派でないからといって抑圧されるべきではないと私も思う。
しかし、性的に解放されればそれで良いってのもやっぱり違って、それは人と人が関わることだからこそ、感情ってものが介在するし、だからこそややこしい。
映画の中でも、そういった感情の問題から逃げられない事で混乱が生じていくのだけど、じゃあ最終的にどうすればいいのかっていうのは、結局、自分とは異なる感情を持つ者である他人を尊重するっていうことに尽きるんだろう。そしてそれは性的なこと以外、例えば自分とは異なる習慣をもつ国の人に対しても、言えることだし、全てのコミュニケーションの問題ってのはそこに尽きるのかもしれない。

そういえば、父親との関係などの部分で、ちょっと「バッド・エデュケーション」を思いだした。比べてみる必要はないけど、物語の中で消化しきれていないように思える、キンゼイ博士が戸惑うことになる「感情」の問題について、補足できる映画の1つかもしれない、とは思う。