銀河ヒッチハイク・ガイド/ダグラス・アダムス

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」がとっても楽しかったので、その帰り道に買った原作本。今日読み終わりました。楽しかった!
映画を先に見てしまったので、映画と違うとことかに気を取られてしまったんだけども、一読して実感したのは、とにかく映画の脚本は良く出来てたんだな、ということ。これだけ面白い原作本で、しかも本国では超人気作ともなると、出来るだけ忠実に作った方が無難なんだろうなと思う。でも原作の世界を壊さない程度にエピソードを追加するっていうだけでなく、映画として緩急をつけて、原作を知らない人でも楽しめるものにするって意味で、あの映画はきちんと成功してたと思います。特にあの冒頭のイルカのシーン。そして歌。それはきっと、この原作の、人を笑わせるあのこまかくて、下らないようでいて、でもしっかり物語にくいこんでるあの瑣末なやりとりの魅力を翻訳したひとつのケースだ。そして、それができるのも制作者に愛が(愛とか簡単に使うなと思うけど愛が)あるからなんだろうなって思うわけです。
とにかく、この作品の魅力を端的に言い表すならば、「その奇想天外なストーリーがディテールの豊かさと脱線で煙にまかれてる」感じ。
例えばこの「銀河ヒッチハイク・ガイド」にはネイティブでないとわかりづらい冗談がとても多いみたいで、例えばペテルギウス星が英語読みで「ビートルジュース」になるなんて初耳だったけども、そんなことはわからないくても声をだして笑ってしまうシーンがたくさんある。

「暗い」彼は言った。
「うん、暗いな」フォード・プリーフェクトは言った。
「明りがない」アーサー・デントは言った。「暗い。明かりがない」
 フォード・プリーフェクトはかねがね、人類について不思議に思っていたことがある。自明も自明なことをたえず口にし、しつこくくりかえすというあの習性はなんなのだろうか。(p66)

とまあ、こんな具合に。
あと各キャラクターの魅力もこの作品の人気の由縁なんだと思うけれど、あの超悲観的ロボット、マーヴィンのその「ネガティブさ」についての描写は原作でのほうが圧倒的に、そのうっとうしさが伝わってきて面白い。
それから映画でも忠実に再現されていた、あのクジラの墜落シーンでのモノローグは素晴らしい。これこそがまさに「究極の問」であるような気さえする。
でもそういうエピソードも全部、繋がりが見えるようで見えない。頭の中にロックされた場所(ゼイフォードのセリフより)を残してる気がするんです。だからこそ、マニア心をくすぐる物語として人気なのかもなーなんて思います。

あと、追加されたエピソードを抜きにすると、映画と原作における、最も重要な差異はラストシーンだと思う。
これについては、私はアーサーが自分で「それ」を選ぶ映画版のほうが好きだけども、アーサーのキャラクターからすると、ちょっと無理がある感は否めない。なので、原作のほうがしっくりきました。
なんだかまったく感想になっていないけども、とりあえずもう一回映画みて、続編読んで、出来ればドラマ版も見てみたい。

映画の感想 → id:ichinics:20051011:p1