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 復讐者に憐れみを

監督:パク・チャヌク
親切なクムジャさん」「オールド・ボーイ」へと続く復讐3部作の第1弾。3部作の中でもっとも陰鬱で救いが無い作品ですが、最も監督のメッセージを感じる作品でもあります。
耳が聞こえず、言葉を喋れない主人公の青年は、病気の姉の為に臓器移植をしようとするのだが自分の腎臓は適合せず、臓器密売人に連絡をとる。しかし結局金を騙しとられてしまい、そんな折にタイミング悪くドナーが見つかったため、誘拐の身代金を手に入れようと試みる、というのがストーリーの導入部です。
まるで倒れて行くドミノのように事態は悪化していくのだけど、それが一体どこから始まったのかがわからない。あの誘拐からだろうか、それとも仕事を首になったことか、臓器密売人と出会ってしまったことか。全てのピースが指し示す方向の先にあるものを、誰も想像していないように見えるのが悲しい。
この映画の登場人物たちは、それぞれ、もとは悪人では無いはずだ。それなのに彼らは殆ど葛藤せずに衝動で行動する。誰かが立ち止まれば、終わったかもしれない。でも、その憎しみの矛先をどこに向ければ良いのかもわからない。
見た後にはかなり暗い気持ちになります。
一番印象に残ったシーンは、ラストでの、自分が死につつある状況でなお自分が殺される理由を知ろうとする男の姿でした。そう考えると、やはり人間は言葉の上に生きてるんだろうか、なんて考えた。

3部作を通して1番気になったのは、この監督の傾向なのかもしれないけど、テーマを描く為に少々ストーリーが強引になるところ。それから画面での暗喩が多過ぎて、少し鼻につくような気もする。でもそういった監督の美学が迸っているところが良いなとも思います。次回作はどんな作品になるのか楽しみ。