真夜中の虹

真夜中の虹/浮き雲 [DVD]

真夜中の虹/浮き雲 [DVD]

監督:アキ・カウリスマキ

主人公のカスリネンはとにかくツイてない。鉱山が閉鎖され、仕事を失ったことに絶望した男(父親?)がくれた車に乗って、とりあえず南へ向かうことにするのだけど、途中で有り金全てを盗まれてしまうし、その強盗を見つけたと思ったら無実の罪で投獄されてしまう。
しかしそれは主人公だけのツイてなさではなくて、冒頭のシーンが印象づけているように、社会全体を覆っている「行き止まり」の感覚なのだろう。そんな中で、カスリネンの飄々とした雰囲気には救いがある。無口なんだけど、ちょっと間の抜けたハードボイルドさが愛おしい。
イルメリと出会う場面で「子供がいるのよ」といわれて「作る手間が省ける」と言ったり、刑務所の中でミッコネンと出会い、煙草やマッチを無造作に投げ合う場面が特に良い。思わず笑ってしまうような無骨なやりとりなんだけど、信頼するというのはそういうことかもしれないと思ったりする。例えば川べりでピクニックをしているシーンなんて、もう突っ込み所が満載なのだけど、家族ってそういうものだよなぁと思ったりして。
そしてラストシーンには、「いつか虹の向こうに」が流れるのだけど、それを絵空事として聞かせるのではないところが良い。どんなに悲惨な状況になっても、それを改善させることが出来ると信じることを選ぶのは、強さだと思う。
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1988年に製作された「真夜中の虹」は続く「コントラクト・キラー」、「マッチ工場の少女」とあわせて監督自ら「敗者3部作」と称しているようです。だからといってただ敗者を描く話ではないところがこの監督を好きな理由だったりする。
なんとなく、今年の年末はカウリスマキスペシャルにしようかなと思ってて、明日は同じDVDに収録されている「浮き雲」。