ロックンロール七部作/古川日出男

ロックンロール七部作

ロックンロール七部作

私にとっては「アビシニアン」ぶりの古川日出男作品、だけど、たぶんこれは「ベルカ」を読んでからの方が良かったっぽい。なんとなく、そんな予感がする。
でも充分面白かったです。私はこういう、大風呂敷広げる話が結構好きだ。しかも題材がロックンロールとなれば、そりゃあ補うべきイメージが、私の頭の中にもストックされている。
この物語のあらすじを簡単に示すことはできないけど、そのイメージは、レコード盤を地球に見立てて、その溝をステップする感じ。それぞれ別の曲の物語だけど、一枚のアルバム「ロックンロール七部作」としてまとめられることで、そこに必然性を見いだすか見いださないかは、あなたの自由ですよって。そんでまた、このアルバムが捨て曲なしなんですよね。面白かったなぁ。全ての偶然を必然と捉えて断言していくのが、気持ち良かった(だってそれは事実起こったことなんだもの!、と彼女は言うだろう。実際全ての文章がこんな間の手のもとに進む)。

あたしたちが歩み去った世紀よ、死ぬな、ロールしろ、とあたしは言うの。p320

七つの物語は、やがて一枚のアルバムへとおさめられるのだけど、その展開にはあまりカタルシスは感じられなかった。でも、それはきっと、21世紀の物語なんだろう。
例えばこの本が音楽だったとして(そしてそれは全ての創造物にたいして言えることだけど)、受け取られ、語られることで生まれ変わっていく。それは「それ」を読む個人の物語へとなっていく。
そういうことだ、と私は思って、興奮しました。ベルカも読む。
ちなみにブックカバーを見てピンときてしまうほど、装丁はコズフィッシュ。