クローゼットの向こう

物語の面白さ、ということについて、「ココヴォコ図書館」のBさんが書かれているのを読んで*1、私にとっての面白さって何だろうということを考えていた。
Bさんが語られていることとはまた全然方向が違うと思うのだけど、私にとっての面白さ、興味深さ、というのは、それを「知っている/でも知らない」という感じだと思う。自分の中にもあるかもしれない何かが、ほかの誰かの言葉で描かれているとき。もしくは全く気付いていなかった部分に、光を当てられたとき。私が触れているこの象は、もしかしてあなたの語っている象と同じなのかもしれない、と思うこと、だったりする。
そして、そういうことというのは得てして現実の生活の中では語られにくいことであり、語ってみてもそれこそ空中に描かれた精密画みたいになんのことやらさっぱり、自分にも見えづらくなってしまったりする。
するとなんだか、その向こうには何もないんじゃないかと思えてくる。ちょうど、幼い頃に「ライオンと魔女」を読んで、家のクローゼットを何度開けても、そこはただの乾燥剤臭い暗がりでしかないことを知るような。そこにナルニアがないことを疑問に思っているなどと言ったら、本ごと取り上げられてしまいそうな、友達にも敬遠されてしまいそうな、そんな感じ。
でも、それは「ある」ところには「ある」のだということが、描かれている物語が好きで、たとえ物語でなくても、全てをつまらなくするような言葉があるのと同じように、それを払拭してくれるような言葉も、世の中にはちゃんとあるような気がしている。
それを、なんだか心強いと思ったりする。
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でもまあ、これは楽しいとかとはまた違う話で、純粋にエンタテインメントとして楽しんでいるときに重要だったりするのは「リズムにのれるか」が大きいのかも、と最近古川日出男さんの文を読んでいて思った。
追記:書きながらごっちゃにしていたけど、このリズムっていうのは文体のことじゃない。文体も含む、テンポやイメージし易さ、退屈な山があっても、それを越えたあとに待つカタルシス、とかそういうもののことだ。
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これ書いた後、はてなブックマークをうろうろしてたらこんなのがあってちょっと笑った。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E4%BA%BA%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AB%E3%81%AF&start=0&hl=ja&lr=lang_ja&ie=utf-8&oe=utf-8&client=firefox&rls=org.mozilla:ja:official