うまくいかない料理

何かが足りない。
とつぶやいてはみるけれど、でもその何かがわからない。
そもそもこの料理が、何なのかもわからないのだ。
鍋の中では煮くずれかけた材料たちが、
もうもうと湯気を巻き上げつつ、決断を迫っている。
こんなに混じりあっているんだもの。
私にできるのは、足すことしかない。
でも何を足せばいいのかはわからないので
それじゃあもう、何も足さずに、
足りないと思ったことを忘れる方が
早いじゃないかと思うのだけど、
実際口にしてみたそれはやはり「足りない」そのもので
仕方ないので「足りない」という名前をつけてごまかす。
でもこの「足りない」すら、きっともう二度と作れないので
せめてこの足りなさを噛み締めて
来るべき足りないの瞬間に、備えようと思う。