角田さんの小説の中でも、特に「バックパッカーもの(仮に)」については、あらすじを読んでも、どれがどれだかよくわからなくなっていたりもして(文庫だと題名が変わっていたりするし)、ちょっと困る。でもこれは題名と内容が直結しているので、わりと記憶に残ってた、と思ったんだけど、先日フィールヤングではじまった「星乃谷荘へようこそ」で思い出して(id:ichinics:20060319:p3)再読してみたら全然覚えてなかった。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/10/05
- メディア: 文庫
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だれもぼくを待っていない。話している言葉は聞きとれるけれどそのどれもぼくに向けられていない。ああ帰ってきたと思える場所がどこにもない。だとしたらそれは、帰る、ではなくて、いく、の続きだ。いく、進み続ける、というのはたしかに魅力的だけれど、それが魅力的なのは帰るところがあるからじゃないの、と続けて思うのだった。(p5)
それは全てにあてはまるよなぁ、と思ったりした。
角田さんの書く旅の空気は久々で、面白かったんだけど、このお話のラストはしっくりこない。
前に「角田さんの小説に共通する題材は「日常の中に紛れ込んだ異物」だと思う」と書いたことがあったけど(id:ichinics:20050403:p1)、ここでの「異物」である王様は、そのキャラクターはとてもよくできているのに、主人公の世界に波風を立たせるまでに至っていないような気がする。主人公には最初から「帰る場所」が見えているし、それは「異物」との関わりのないところで見えている。だから、この物語が何を描きたかったのか、つながりが少しわからないような気がして読了した。