『陽気なギャングの日常と襲撃』/伊坂幸太郎

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングが地球を回す』の続編。
物語は成瀬、響野、雪子、久遠のそれぞれを中心とした「日常」からはじまり、「襲撃」へと移行する形になっている。あとがきを読むと

今回の続編は当初、四人の銀行強盗を中心に、毎回主人公を変え、短編の作品を書いてみよう、ということではじまり、全部で八つほど『小説NON』に掲載する予定でした。
ただ、四つほど掲載していただいたあたりで不意に、単純に八つの短編を並べることに疑問を抱きはじめてしまいました。
というわけで少々、我儘を言わせていただいて、最初の四つの短編については、独立した短編ではなく、長編の第一章として組み込み、第二章以降は(略)書き下ろさせていただきました。

とあるので、当初はこの物語の中心となっている事件は想定されていなかったのかもしれなくて、それなのにきちんと、伏線が消化されている(若干気になるとこもあるものの)のが、さすがだなぁ、と思った。
とはいえ、このシリーズで楽しむべきなのは、主人公四人のやりとりのほうだと私は感じていて、そのトリックを読み解くことよりも、むしろひっかかってしまうことのほうが、楽しかったりする。
ここしばらく「魔王」「砂漠」「終末のフール」と伊坂さんの作品については追いかけ続けてたから感じるのかもしれないけれど、たぶん、このシリーズでは意図的に文体がかえられているのだと思う。ほかのもそうかもだけど、特にこのシリーズは各ページの「 」の多さを見れば一目瞭然で、そうして会話を中心にすえ、平文は極力状況描写に当てられていることから、それはまるで映画のシナリオのようにも見えなくはないんだけども、各台詞を取り違える、ということが全くなく読めるというとこ、これ大事と思った。キャラクターが確立されている感じで、それは映画を見た後でも左右されるとこがなかったりする。
面白かったです。でも第一巻から読まないともったいないです。