At War With The Mystics/Flaming Lips

At War With the Mystics

At War With the Mystics

少し前に出たフレイミング・リップスの4年ぶりの新作。彼らの音の中にずっとあったサイケデリックな色調がより、その全盛期である70年代寄りに近付いたような印象のアルバムです。冒頭の「The Yeah Yeah Yeah Song (With All Your Power)」なんかは、もろにミレニウム(60年代後半のカート・ベッチャーを中心としたバンド)を彷佛とさせるソフトロック。かと思えば2曲めはファンクだったり、バラエティには富んでいるのだけど、それらがちゃんとリップスの色で包まれているところに、キャリアを感じる。
個人的にはラストを飾る「Goin’On」が気に入っている。この曲で締めることによって、アルバム全体が落ち着いた雰囲気にまとまっている気がします。60年代後半の、ソフト・サイケが好きな人には特におすすめ。

ついでに振り返る

1983年から続くリップスの20年以上にもなる(!)遍歴を見渡してみると、ジャケットデザインで80年代、90年代、『The Soft Bulletin』周辺と、『Yoshimi Battles the Pink Robots』以降の4つの時期に分けられるような気がする。なんとなくだけど。

Clouds Taste Metallic

Clouds Taste Metallic

80年代の音源はほとんど聴いたことないので端折ると、90年代はガレージ寄りのエフェクト越しギターが虹色に輝くポップソングという印象。特に95年に出たアルバム「Clouds Taste Metallic」は大好きなアルバムで今でもよく聴いています。あの音を聞くと真夏の日差しを思い出す。ウェインのボーカルは溶けたソフトクリームみたいだし。なんて。私はこの頃のリップスがとても好きなので、今もこんなバンドがいてくれればなぁ、と思うのですけど、やっぱりどこにもいない。
Soft Bulletin

Soft Bulletin

転機となったのはやはり99年の『The Soft Bulletin』だと思う。ただ、その前の四枚組は(音が四つに分けられている)まともに聴いていないので何ともいえないのですが、あれは、なんか、おかしかったよねぇ? 四枚を一遍に聞くって普通出来ないしなぁ。でもいつか四枚一遍に聴けるチャンスがあればいいとは思うのだけど。
ともかく、『The Soft Bulletin』を初めて聴いたときの、感じはよく覚えている。いきなり風景が開けて、音の固まりが降ってくるような驚きと、音の洪水に流されながら、懐かしい風景をかいま見るような切なさと。あーこんな音は初めて聴いたな、と思った。そしてこんなバンドも、今はもうどこにもいない。
リップスは、ちょっと聴けばすぐピンとくる独特の音づくりなのに、アルバムごとに全然違うバンドみたいで、不思議。そしてどのアルバムも好きなんだけど、昔のアルバムが懐かしくなっても、その音はもう戻ってこない感じがして、少し寂しい。