RETURN TO FOREVER/Chick Corea

Return to Forever

Return to Forever

70年代初頭、フリー・ジャズのカオスから新しい音が模索されていた時代に生まれた、後に「フュージョン」と呼ばれる音楽の最初の一歩ともなるアルバム。このアルバムを聴くと、それはアコースティックとエレクトリックの融合であったのだということを思い出す。
なぜ久しぶりにこれを聴いてみようと思い立ったかというと、このアルバムタイトルにひっかかるところがあったからなのだけど、これは「永劫回帰」と訳すよりは、チック・コリアにとっては「原点回帰」であったのだろうということが、ライナーを読むとわかる。そこはチック・コリア自身の著書『ぼくの音楽 ぼくの宇宙』からの引用でこう記されている。

「ぼくはもう、じぶんの音楽に、他人の影響をそれほど感じなかった。ぼくはわかったみたいな感じがしたのだ」

なるほどそうか、とわかったつもりになれるほど、チック・コリアの音源を聴いてはいないのだけれど、確かにこのアルバムには名盤と呼ばれるのふさわしい品格のようなものがあるし、また、フリー・ジャズというムーブメントを抜けた先にこの風景があるのだとすると、当時このアルバムが賞賛をもって受け入れられた理由は腑に落ちるように感じる。秀逸なジャケット・デザインに現れているように、このアルバムを聞いていると、まるで空を飛ぶ鳥の視点を借りているような気分になる。
それでも、やっぱり私がこのアルバムを好きになれないのは、ひとえにエレクトリック・ピアノの音が好きではないからだ。特にこのような曲調と音触でソロのエレクトリック・ピアノは生理的にだめみたい。演奏はすばらしいと思う。ライブで聴いたらきっと夢中になるだろうなとも思う。でもやっぱり、抵抗がある。そして、それは#3#4のフレーズがコマーシャルなどで多用されていることも一因かもしれなくて、だとしたら皮肉なことだなと思う。
メンバーは次の通り。

チック・コリア(elp)/ジョー・ファレル(fl, ss)
フローラ・プリム(vo, perc)/スタンリー・クラーク(b, elb)
アイアート・モレイラ(ds, perc)

私がこのアルバムで最も好きなのは#4の冒頭、スタンリー・クラークによるアコースティック・ベースのソロだ。そして曲全体を通し、このベースの音ばかりに耳を奪われてしまう。本当に本当にすばらしい演奏。そして#4後半にあるソプラノ・サックスソロの辺りではエレクトリック・ピアノもいい感じで聴ける。