活字メディアとwebと文章

はてなブックマークで知った記事。

 出版業界の原稿料相場については、ご存知ない方が多いと思いますので、ちょっと説明しておきましょう。この業界では原稿料を400字詰め原稿用紙一枚の価格で計算します。
 だいたい、400字詰め原稿用紙一枚あたりの価格で5000円が相場です。この価格ですら、ここ30年ほど値上げがなく、ライターたちはブーブー言っております。よほど幸運な人を除いて、生活が成り立たんのであります(略)。
みなさん、さようなら。ブログ連載から降ります。 烏賀陽(うがや)弘道の音楽コラム

以前、原稿を買っていただいたときに、1枚2000円という具体的な価格を言われて初めて、文章で食べるというのはキツイんだなとしみじみ思ったことを思い出した。だって単純計算で月20万をかせぐのに100枚書かなきゃいけないってことになるし*1。でもまあ取材を必要とするようなフリーライター(週刊誌などを想定しています)の場合は違うんだろうなと思っていたのに、この記事を読んで、プロでも5000円なのか、とびっくりした。もちろん出版社によるとは思うけど、烏賀陽さんの経歴*2を見ると、これを上回るところは少ないだろうとも感じる。
ただ、これは雑誌の話なので、書籍としてまとめる予定のある原稿の場合は、雑誌掲載時にこの値段でも、書籍になった際に入る印税でどうにか割にあう仕事になるのかもしれない。その辺はわからない。
しかし記事で書かれているように、一度値下げしてしまえば、「じゃあウチも」と言われることは確実にありうるだろう。原稿には「定価」のようなものがなく、しかも納品した後に金額を提示されるなんてのはよく聞く話だ。(参考1 → たけくまメモ:出版界はヘンな業界
そして今回のブログ連載での健康料は「400字詰め原稿用紙に換算すると、5枚。一枚あたり何と1000円を切っていた。」らしい。それでも、烏賀陽さんはインターネットメディアというものに希望を見いだしでいたからこそ、「価格破壊」ともいえる稿料で仕事を引き受けたと書かれています。しかしやがて「そのインターネットメディアが立ち上がりつつある今だからこそ、驚愕の低価格原稿料を定着させてはならないのです。」と考えるようになり、結局は契約満了で延長はせず、というのが今回の記事を書かれた背景のようです。
もちろん、web媒体での原稿料と印刷媒体の原稿料を天秤にのせるのは難しいとも思う。売り上げのほかに広告収入のある雑誌媒体に比べて、web媒体というのは直接的なお金に結びつきにくいものに感じる。よって、予算もそれほどにはとれないだろうから「編集者」もいないかもしれない。そもそも文章というのは、その「質」を計りにくいものだし、webでは無料で供給されているものが多すぎる。

大手出版社を含め、活字メディア業界はいま、ヨレヨレであります。やれ雑誌が廃刊したの出版社がつぶれたのと、クラい話題しかない。そんななか、ぼくが希望を失わずライターを続けているのは「ライティングという作業だけは、絶対に機械化できない」ということを信じているからです。

確かに「新雑誌創刊」で売って(大手の場合は、主に広告枠を、なのかな)、その影で廃刊、てのもよく聞く話だしな…。うーん。難しい。webの場合はさらに、それを支える収入源から考えなければ、原稿に対価を払ってプロに任せるという媒体が増えることも難しいんじゃないだろうか。
どちらの場合も、やはりしわ寄せは受注者側にくるだろうし、それがゆくゆくは発注者の首をしめる、ってことになりそうだ。出版の場合、イメージとしては[雑誌/新聞が売れなくなる→でも広告枠は高い→じゃあ別の媒体に広告打つか→広告枠値下げ→予算削減→原稿料値下がり→最初に戻る]こんな感じなんだろうか…。
個人的には印刷物が好きだし、少部数の書籍でもきちんと刊行されるようになるには、出版界がもっと活気づいてくれなくちゃ、と思うんだけど、なんとも難しい話だな。もう少しweb媒体と住み分けができるような方法はないんだろうか。
(参考2 → たけくまメモ:【レジュメ】朝カル「ブログ論」の「出版の耐えられない軽さ」の箇所に問題提起がいろいろある)

*1:まあそれはプロじゃないからなのかもしれないし、単純にお金に換えておしまいになるものでもないわけだけど

*2:http://www.ugaya.com/