ディエンビエンフー/西島大介

ディエンビエンフー (100%コミックス)

ディエンビエンフー (100%コミックス)

IKKIで続編が始まるので、その前にと思って読む。サウンドトラックを聴きながら。

多くの場合、本当の戦争の話というものは信じてもらえっこない。
すんなりと信じられるような話を聞いたら、眉に唾をつけたほうがいい。
真実というのはそういうものなのだ。
往々にして馬鹿みたいな話が真実であり、まともな話が嘘である。
何故なら本当に信じがたいほどの狂気を信じさせるにはまともな話というものが必要であるからだ。
ディム・オブライエン「本当の戦争の話をしよう」(訳:村上春樹

冒頭に掲げられたディム・オブライエンの言葉に対し、著者は『「本当の戦争の話」がありえないのだとしたら、「馬鹿みたいな嘘」ばかりを描いてみよう。もしかしたら、意外とまともな戦争の話になるかもしれない。』とあとがきに書いている。
そして、ここにあるのはもう「馬鹿みたいな嘘」ばかり、なはずなのに、ティム・オブライエンの描いていた戦場の空気に、すごく近いと感じられる。こんなこともあんなことも、ねえ、あり得ないよねえ、と肩をすくめるその人そのもののような、リアルさがあって参る。いや、本当はきっと違うのだ。けど、それを読む、そこから遠くにいる、私の視線に似ているのだ。
そういえば、ティム・オブライエンは『僕が戦場で死んだら』の中でこう書いていた。(感想→ id:ichinics:20050706p3)

恐怖はタブーだった。もちろん、恐怖について話すことはできたが、肩をすくめ、にやっと笑って、しようがないという態度をはっきり示さなくてはならなかった。

プロローグに記された1973年の結尾(Coda)に至るまで、これからどのような物語が描かれるんだろう。

「ここは……? 天国?」
「バーカ 地獄だよ!」

ところで、私が買ったこの漫画には、DJまほうつかい&AENさんによるイメージアルバムがついていた。(AENさんて、と検索してみたら、どうやらCOMMUNE DISCのレーベル・オーナーさんらしい)
これがすごくいい。そもそも本人が作ってるんだから、イメージはぴったりだし、素材の選び方、並べ方、どれをとっても、サウンドトラックとして作品と一緒に走る気持ち良さがある。
特に印象的だったのは、トイピアノを使った終盤の曲。トイピアノの音がすると、すぐパスカル・コムラードを思い出してしまうんだけども、「ピアノが下手なフランス人」から「おやすみ、おばあちゃん」へ続く過程にグッときてるうちに、こういう音について何かいおうとすることがばかばかしくなってきてしまう。すごく気に入った。
ところでAENさんについて調べてるときに「Yabemilk」というミュージシャンが「トイトロニカ」と紹介されてるのを見て、これもきいてみたいなー、と思ってる。