ヨロンヨロン束芋@原美術館

やっと行ってきました。楽しみにしてた束芋展。
入ってすぐのところに、新作「真夜中の海」を覗ける小部屋がある。が、よく見えず、そのまま進むと「にっぽんの台所」。以前オペラシティで見た「にっぽんの御内」と台所の場面がかぶっているけれど、「にっぽんの台所」で見るのははじめて。その隣のブースでは小さな画面でいくつかの作品が見れる。混雑していたので、まだ実物を見たことのない「にっぽんの通勤快速」と「怪談」(だっけ?)だけ見る。青い鳥が画面にぶつかる場面が好きだ。2階にあがる途中には、「真夜中の海」を俯瞰できる場所があり、もう一度見直す。2階で展示されていた「公衆便女」と「hanabi-ra」は初めて見る。その後、日没を待って、1階奥のスクリーンで「ギニョラマ」を見て終了。

「にっぽん」シリーズは、今見ると、ひと昔前の「にっぽん」だな、と思うところもあるけれど、このじめじめとしているのに乾いた感覚はやはり束芋ならではだと思う。空から中学生が降ってきて、政治家は回り、父さんは首を切られる。「にっぽんの台所」が作られたのが1999年だったことを思うと、ゆるやかに沈んでる感じがする。
初めて見た「公衆便女」と「hanabi-ra」はこれまでと同様に浮世絵の色を使い、物語を描いた束芋らしい作品だった。特に「hanabi-ra」が気に入った。体の中を動く鳥と魚の感触がいい。おちが通勤快速と似ているんだけれど、質感が違うのが面白い。
「真夜中の海」は波間に浮かぶイメージが幻想的なアニメーション作品。絵柄のタッチが少しかわったのかなと思う。「ギニョラマ」は手のイメージを組み合わせたアニメーションで、物語を想像させない束芋としては珍しいインスタレーションだと思った。
新作をいくつか見て感じたのは、束芋の初期作品のモチーフとなっていた「にっぽん」への違和感や風刺のようなものが影をひそめているということ。抽象的な描写と、新たなモチーフの獲得と、どちらにすすむんだろう?