系図/高田渡

系図

系図

山之口貘という詩人を知ったのは、高田渡さんのおかげだ。それもこれも、ずいぶん遠くにきてからの影響であり発見であるのだけど、幸運な出会い方だったのだと思う。
高田さんが歌った山之口作品の中には、キセルのカバーで愛聴している『鮪と鰯』があり、このアルバムに収録されている『告別式』がある。昨年、高田渡さんがなくなったというニュースをきいて、この曲を思い出した人も多いのではないかと思う。大好きな曲だ。牧歌的な演奏にのせて、たんたんと「ある日死んでしまった」自分の告別式について語る歌。いいねぇ、って思う。
でも、今回改めて聴いてたら、永山規夫さんの書いた詩を歌った「手紙を書こう」がすばらしいと思った。死刑囚として服役中に作品を発表し、評価された人で、とはうっすら知っていたものの、その作品を読んだのはこれがはじめてだった。「ミミズの歌」も同じく、『無知の涙』という手記に収録された作品だという。

生まれて 死ぬだけ
おまえ ミミズ
跡形もさえ消され
残すものない憐れな奴

この詩は、ただ読むか、背景を知って読むかでまったく印象が違いそうだけれど、それが歌われていることによって、不思議な立ち上がり方をする。ぼやんと目の前に、見える風景があって、詩を歌うということは、その詩の表面に見えること以上のものを取り出してみせるってことなのかということに、改めて気付かされる。だからこの人の歌はやさしいなと思うのかもしれない。
たとえどんな悲しい詩でも、高田渡さんが歌うと、すこしおかしくて、ふわっと甘い気持ちになる。そこが好きだ。