Born In The U.K./Badly Drawn Boy

Born in the UK

Born in the UK

1stアルバムの個人的で濃密な空気は薄れたものの、そこに漂う親密さはかわらない。EMI移籍第一弾となる新作は、Badly Drawn Boyことデーモン・ゴフの名を広く知らしめた名作「About a boy」のサントラあたりと地続きにある、甘く、柔らかな影のあるポップソング集。彼が良質のメロディ・メイカーであることを再確認できる。
もちろん、タイトルを見れば、ブルース・スプリングスティーンの『Born In The U.S.A.』へのなんらかの思いが込められているらしいことがわかる、し、実際BDBスプリングスティーンのファンなのだそうだ。が、私は恥ずかしながら未だにスプリングスティーンの音楽を聞いたことがない(どこかで耳にしてはいるだろうけど)。世代の問題かもしれないし、ただたんに盲点だったのかもしれないけど、これはなんというか、いち音楽好きとしては、世界史未履修とかいうくらいの空白なのかもしれない。ボスと呼ばれてるらしいというのは知ってるけど。そんくらいだ。すみません。
なのでそことの関連性についてはわからないのだけど、この「Born In The U.K.」というタイトルを冠し、青空よりも曇り空の似合うアルバムに込められているのは、彼の中に連なるイギリス的なる音の系譜、なのだと思う。タイトル曲「Born In The U.K.」のイントロにエルガー「威風堂々」が使われてるところからしても。*1
とはいえ「The Long Way Round」とかを聞くと、カート・ベッチャーやLeft Bankeなどアメリカのソフト・ロックを彷佛とさせるし、それはつまり、こういうことなのかなだと思う。

Then you see the union jack
and it means nothing
but somehow you know
that you will find your own way
it's a small reminder every day
that I was born in the UK
「Born In The U.K.」

ちょっとコステロっぽい「Degrees Of Separation」とか、リフレインが美しい「Without A Kiss」とか、すきだ。

*1:ところで「威風堂々」は、昔「小公子セディ」の中の悲しい場面で使用されていたのを切っ掛けに、私にとって泣きのスイッチを入れる曲になってしまった/悲しい曲ではないんだと思うんだけど/でもどんなシーンだったか思い出せない