僕たちは歩かない/古川日出男

僕たちは歩かない

僕たちは歩かない

ハードボイルドワンダーランドから抜け出し、世界の終わりに集う料理人たちのお話。挿絵が多いせいか「羊男のクリスマス」のようなコンセプトの本なのかなと感じた。
私は古川日出男の駆け抜けるような語り口が好きだし、登場人物の力強さや、各作品に開かれている日常の中にある冒険の入り口というか、そんなわくわくする感じが楽しくて読むのだけれど、この本は、いかんせん短すぎると思った。圧倒と仰々しさは紙一重のところにあって、あと少し、私には足りなかった。ペダルを踏みぬく手応えを感じられないままに、読み終えてしまったような気がする。
そういえば、この物語は「かえるくん、東京を救う」にも少し似ている。舞台は現代でも、神話やファンタジーに近い、祈りのような物語だ。しかし、その祈りを共有するには、そのフィールドの情報だけでは足りなくて、やはり僕について、もしくは彼らについてもっと詳しく、語られるのが読みたかった。

これまで書いた感想とか

個人的に、今年は古川日出男の年だった、かもしれません。だからちょっと期待値が高くなってるというのもあるのかも。