鉄コン筋クリート

ichinics2006-12-23
待望のSTUDIO4℃新作、待望の「鉄コン筋クリート」映画化。今日が初日でした。やっと見れてうれしい。最初にパイロット版を見たのが6年前くらい? それから5年経って、昨年映画化の話を聞いて、今年のはじめにアニメフェアで予告見て、長かった…。
すごく面白かったんですが、思い入れがありすぎたせいか、感想がまとまらないので、以下、初見で思ったことをだら書き。
とりあえず個人的にお勧めしたい見どころは「宝町」です。

映像について

冒頭の「朝と夜」とのチェイスシーンで宝町をぐるっと見せながら、子供たちが飛ぶ爽快感に体が思わず前のめりになる。全編通して、映像がすばらしいアニメだったと思います。あわい色彩は世界観にあっていたし、4℃らしいキャラクターデザインや独特の動きにも統一感がある。
松本大洋さんの絵柄は独特だし、特にこの「鉄コン筋クリート」は物語と絵が密接に結びついている作品だと思うのだけど、アニメのキャラクターデザインはディフォルメされていても、線にタッチが残っているせいかかけ離れて見えない。特に線画のニュアンスを残しつつ、人物の動きをいきいきと見せる感じにぐっときて、こういうのは湯浅政明監督の得意技というイメージなんだけど、今回総作画監督を担当された西見祥示郎さんは「マインドゲーム」にも参加していた人なのだときいてなるほどと思った。今後の活躍がとても楽しみです。シロの心象風景や、リンゴの木のシークエンスなど、センス良いなと思うとこがたくさんあった。
ただ、アクションシーンの「省略」が少し物足りないとも思った。これはR指定対策なのかもしれないけど、効果音だけでも入れてほしい、と思う場面が多々あった。
個人的にぐっときたのは美術。昭和っぽい世界観は4℃の得意技で、それはもう個人的にぐっとくるポイントでもあります。「鉄コン」については漫画と、パイロット版の段階で描かれたと思われる設定画をいろいろ見て、個人的にもずいぶん妄想を膨らませていたんですが、もちろんそれを軽く凌駕する世界がそこにあって、半端じゃない作り込み方、描き込み方に圧倒される。この宝町の存在感だけで、見て良かった、って、心から思います。建築萌えの人にはぜひ見て欲しい。すばらしいです。

演技/物語について

声優は、シロ役の蒼井優さん、ネズミ役の田中さんが特にキャラクターにぴったりだった。クロも良かったんだけど、シロが女性の声なので、クロだけ声変わりしてるのには少し違和感があったかなと思う…。エドとアルと同じ配役が良かったとか思いましたが、まあそれは余談の妄想。田中さんのネズミには文句のつけようがありません。ハードボイルドですよ。ネズミのある場面では場内からすすり泣く声が聞こえましたが私もちょっと泣いたね。かっこいい。
ただ、脚本にはちょっと違和感があった。この「鉄コン筋クリート」は「宝町」を舞台に描かれる二人の少年「クロとシロ」の物語、なのですが、これはいわば、自分の中の善悪と戦うお話でもある。強さと許しとのはざまにいる「クロ」という少年の葛藤が描かれているのですが、そういうテーマを全面に押し出しすぎかなぁ、と、ちょっと思った。ラストのあれもちょっと気恥ずかしい。「説明」の加減というのはほんとに難しいと思います。
とはいえ、クロとじっちゃの会話の後ろにシロの独り言が続いている銭湯の場面など、ぐっとくる演出もたくさんあって、あの世界での物語はあれでおしまいなのがもったいないというか、もっともっと、たくさん見たいと思う映画でした。それこそ「24」みたいに*1細かく見たい。
そのくらい、濃密な作品でした。何度か見なきゃ見切れないのでまた行く。

監督:マイケル・アリアス
脚本:アンソニーワイントラープ
演出:安藤裕章
美術:木村真
総作画監督西見祥示郎

参考(http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20051019/p1
ちなみにパイロット版の「宝町」。私のデスクトップ画像は長らくこれでした。

*1:って「24」みてないですが