マリー・アントワネット

ichinics2007-02-12
監督:ソフィア・コッポラ
ロストイントランスレーション」を見た時に、なんだかすごくやるせない気持ちになったのが嘘みたいに、この「マリー・アントワネット」は楽しんで見ることができた。どちらもソフィア・コッポラソフィア・コッポラによるソフィア・コッポラのための映画、という勢いはあるんだけど、「マリー・アントワネット」という映画が好きだなと思ったのは、世界と自分との関係を疑わない、全能感を持った少女時代が、残酷な形で壊れるまでを描きながらも、好きなもの、楽しかったことは否定しないという強さがあったとこだと思う……、とかそういうややこしいこと抜きにしても、すべての場面がLovelyとBeautifulに満ちていたのがすばらしいと思った。
以前、フランス旅行に行った時にヴェルサイユ宮殿も見にいったんですが、今の視線でみるとどうしても古ぼけて見えるあの建物と観光客でいっぱいの庭園が、映画の中では瑞々しく、確かに輝いて見えた。という作り込みようは全て監督の美学に基づいているのだろうなとも思ったし、あのような風景を見れただけで、もう満足です。あのプチ・トリアノンでの生活は、確かに夢のようだし「わたし田舎って大好き」という言葉がいかに誤謬であったとしても、それより前に憧れてしまう気持ちがある。
物語自体は、テンポが緩いかなぁと思ったとこもあったけど、ルイ16世とマリーのやりとりはどれも味があって、好ましく思えた。群衆に囲まれたヴェルサイユ宮殿の中での家族をかばうようなルイ16世の手つき、それから最後に二人が見つめあう場面なんて、思わずマリーが「わたしたち、やっと夫婦になったわね…」とか言い出すんじゃないかと思うくらいで、このへんの、ルイ16世を最後までちゃんと夫として描いているところも、いい。(ルイ16世びいきです)
あと、映画の中には私も大好きな音楽のいろいろが出てきてうれしかったんですが、その度に現実に引き戻されるというか、映像と音楽があんまりあってないかなぁって思うとこも多かったです。とくにヴォーカル入りのトラックを使うところは難しいですよね。
久しぶりに絵をかきたくなって、写真集のつもりでパンフレット買っちゃった。わー。