松ヶ根乱射事件

ichinics2007-03-12
監督:山下敦弘
どこかにありそうな田舎町に、「災厄」たちがやってきたのをきっかけに、それまでもあり続けた、いらいらさせるものたちが後から後から湧いてきて、ふたをしても溢れ出て消えたかと思えば向こう側から顔をだしへらへら笑っていたりするこのエンドレスもぐら叩き……悔しい、でもどうやって怒ればいいのかわかんないんだよ、ちくしょう! っていう行き止まりの村のお話。
主人公は「とりあえずそいつ殴ろうよ!」と叫びたくなるような場面でも殴ってくれないので、感情のはけ口もなく、かといってその追いつめられ方も絶妙にてきとうな生殺し状態で、いつの間にか、自分があそこに飲み込まれたら生きてかえってこれるのかね、とか考え出していて、でもどう考えても乗り切る自信が全くないことを確認し気分は曇天。この「ありそう」な嫌さの描き方がすごい。物語だけでなく、画面に映るもの全てに、くたびれた重さや生活感のようなものが染み付いている。
閉鎖的な田舎の村で起こる狂気、といえば本谷有希子さんの「腑抜けども悲しみの愛を見せろ」とか、山本直樹の何かとか柏木ハルコの何かとか思い出しますが、あれらがきちんと狂気の発露まで描いてくれるのに対し、この「松ヶ根乱射事件」は、うん、こういう絶望もあるよなと思わせる出口なしだった。
でも私が何よりもイメージを重ねていたのは、すぎむらしんいちさんの「スノウブラインド」で、それは画像↑の場面の、雪景色、女、小学生、というキーワードだけなんだけど、川越美和さん演じる女性は、すぎむらさんの描く女性がそのまんまスクリーンに映し出されているかのようだった。川越さん主演ですぎむら作品映画化してほしい。ぜひ。

おすすめ

この映画はsamurai_kung_fuさんのこの
ゾンビ、カンフー、ロックンロール − エキセントリックは免罪符じゃない! 「松ヶ根乱射事件」
エントリの冒頭だけ読み、面白そうだと思って見に行きました。
で、続きは帰ってきてから読もうと思ってブクマしてて、ついさっき読んだのですが、あー、まさにそういう映画だったって思いました。かっこいい感想。