15時の電車。つま先をかすめる光の帯にじっと目を凝らす。なにかを考えたいのに、触れない。ぎっしりとした空白にべたべたと手形をつけてまわり、飽きて、窓の向こうを流れる外の世界を眺める。そこには10年前の通学路があって、作りごとみたいに見える遠い場所にも、ちゃんと世界はあるのだということを思う。だからなんだ、と少しだけつま先をずらし、日陰にもぐりこむと、向かいの席のおばあさんがおもむろにブラインドをおろし、車内にしんとした暗がりが広がる。じじじ、と誰かの携帯が鳴る。外はあきれるほどの晴天だというのに、開いたドアから流れ込む外気は身をすくめるほどにつめたい。