半月前

国会図書館へ行くと、借りたり複写したり返したり待ったりを繰り返してあっちこっちたくさんの移動を繰り返すはめになるのだけど、あそこの暗がり、とか、窓の外の吹きだまり、とか、日差しの感じとか、あの人もう数時間も前からソファで眠ってる、とかそういうものが目に馴染んでいくと、ふいにここで暮らしているような気分になって、楽しい。
新館の地下(ほんとは1階)の喫茶店は、天井が低く薄暗く、オナモミみたいなランプがちょっとかわいいので気に入っている。カフェオレのあわもきれいだし、へんな音楽もかかってないし、眠っている人もたくさんいる。このまま数ヶ月先まで吹き飛ばされてしまいそうな薄く丸まった時間。
入館時に荷物を預けるロッカーは、いつも同じところを選んでいたのだけど今日は塞がっていて、奥に、何か入ってるんじゃないかってほんの少し、気になった。ロッカールームで、その場所を使っていた人とすれ違う。当たり前だけど知らない人だった。一足先に図書館を出たその人は、私が玄関を出る時、黒塗りの車に積もった桜を払っていた。ような気がした。