わにとかげぎす 3巻/古谷実

わにとかげぎす(3) (ヤンマガKCスペシャル)

わにとかげぎす(3) (ヤンマガKCスペシャル)

「事件」から三か月半が経ち、「死んだらおしまい」ということを悟った富岡。
新しい職場にうつった富岡が出会った「斉藤君」と富岡の「おしまい」観のコントラストがこの巻の中心になっていたと思う。特に後半は、富岡を描くというよりも、富岡の視点から斉藤君を見る感じになっている。
この斉藤君のキャラクターは、大金を手にしても「結局いらねえ」と思ってしまった上原にも似ている。つまり、この連載を俯瞰すると「孤独は罪」だと思った富岡が、様々な孤独の形を見ていく話になるんじゃないかな、と思った。
上原が、瞬間的な欲求に従うタイプだったのに対して、斉藤君は、それでうまくやってる、ように思える。

富岡さんは完全に“毒”だと思ってる……
“毒”は“薬”にもなるよ……
悪い面ばかり見ちゃダメだよ……
p101

という台詞とか、なんか、あーあるよなと思った。波風たたない状態を心地よいと思うかつまらないと思うか。それもどっちかに完全にふれてるのはなかなかない状態で、富岡みたいに50のとこにいて揺れてるのが一番多いんじゃないかと思う。それでもたまに、斉藤君みたいに真っ白でおいておける欲求もあって、それはずいぶんとラクなことでもあって。
なんというか欲求というのは、持つことを忘れてると、なかなか持てなくなるものでもあるんだよね、ということを思ってちょっとへこんんだ。次巻が楽しみです。
あと今回は、羽田さんの決死のアタックも印象に残った。富岡との噛み合ない会話も楽しかった。だからこそ、斉藤君の今後が、とても気になる。