渋谷ぶらぶら節

家を出ると、それまでブロック塀にしがみついていたカナヘビが、長いしっぽをくねらせながら日陰へ潜るのが見えた。かがみこんで顔をのぞき見ても、彼(もしくは彼女)はじっとしたままで、その目はどんなふうに、わたしを見て/もしくは見ていないのだろうかと思う。写真をとっても微動だにしなかったが、日陰だったせいでうまくうつらなかった。

バスにのる。駅前のパン屋をめぐったのち、電車にのって渋谷へゆく。店をめぐり、半そでやキャミソールや薄い生地やらレースやらについ手がのびるのは、夏がきている証拠だわなんて納得したような頭で、妹はサンダル、私はデニムを買った。シャツも買った。たぶんお互いに金欠なくせに散財をしてしまったことにちょっとした罪悪感と高揚感を覚えつつ、喫茶店に入り同じケーキ選び、同じタイミングで甘さにぞわぞわしてしまったので、これは血のつながりと関係あるのかと一瞬思ったけれど妹はカレーが好きじゃないので(そして私は大好きなので)味覚は関係ないだろうとすぐに了解する。パルコの前で大きなバイクをみかけ、そういえばあそこのライブハウスに行ったとき、私はチェックのシャツをきていたのだけど、あのシャツはどこにいったのかなということと、その日、一緒にいた人のことを少し考える。

妹と別れた後は、私がカレーを好きであることの証として代々木公園にいくつもりだったのだけど、予想以上にケーキが胃にこたえたので、予定変更して本屋に行き、積んである本が山ほどあるにも関わらず漫画を買い、それを喫茶店で読んだ。コーヒーの濃さと、読んだ漫画のすばらしさに少し動揺しながら道を歩いていたら、さきほど思い出したばかりの人にばったり出くわしてさらに動揺する。その様子はあまりにもあの頃のままで、でもだからこそ遠いなということを思い知ったりもして、それなのに、帰りの電車では、でも気分が浮き沈むと生きてる感じがする、なんて考えていて、どうしようもない。
ほんとにどうしようもないが、私の明日はとりあえず続く。