大日本人

ichinics2007-06-10
監督:松本人志
おもしろかったし、楽しかった。好きな映画だなと思いました。
「頭頭」とか(見たのは10年くらい前だけど)ちょっと苦手だったし、ダウンタウンが、松本人志が好きか、といわれるともうよくわからないよねぇ。なんて思いつつ映画館に見に行くつもりはあんまりなかった。でも先日、たまたま見た「スマステーション」のインタビューで、なんとなくだけど好きな映画かも…と思わされたので、見に行ってきました。
物語は、大日本人であるところの大佐藤(松本人志)を追う、カメラとインタビュアーの視点から、ドキュメンタリー「風」に描かれる。タッチでなくて「風」なのは、あきらかにそれを仕掛けとして使っているからだし、松本人志独特の、ちょっとハズした受け答え、問い返しなどは、あまりになじみ深いもので、ドキュメントには感じられない。
でも、もしこれを、松本人志じゃなくて別の俳優、もしくは初めて顔をみるような人が、やってたらもっと全然違って見えるんだろうなと思う。「スマステーション」のインタビュー内で、「出演はしたくなかったんだけど、それじゃあ金は出せないみたいなこと言われ…」という話があったように、それが、本来思い描かれていた「大日本人」なのだろうし、そのへんフィルタをかけずに見ることのできる(たぶん)外国の人などはどう受け取るのか、気になるところです。
それでも時折、松本人志という名前を思い出さずに大佐藤だけが画面が見えるときがあって、例えば最初に大佐藤が家の敷地内に入っていく場面の、きたないきれいさ。それからsamurai_kung_fuさんの感想(「ゾンビ、カンフー、ロックンロール それでも犬は肛門を見せる「大日本人」」)でも挙げられていたけれど、発電所に向かう大佐藤が、スクーターで坂道を上って行く後ろ姿を後続のカメラが延々と映す場面、そのフレームの両端に見える禍々しい看板の文字の意味を解する瞬間は、ほんとゾクゾクした。
ほかにも発電所員へのインタビューシーンとか、「儀式」のあほらしさとかを描くやりかたとかすごく好きだ。そして、そのような「素の面白味」と、コントラストをつけて描かれるのが「大日本人」部分。
たぶん同じく「スマステーション」のインタビューで「ヒーローものをやりたかった」と言っていた(ような気がする)んですが、ヒーローという存在を、情景だけをねじって素の人間と地続きに描くことで、切なさとおかしみを滲ませていてそそられた。このモチーフで、もっと掘り下げて欲しかったな、なんて後ろ髪ひかれつつ、終盤は突然のちゃぶ台返し。あれを、面白いだけで見ていいのか、それとも意味を読んでいいのか、思わず照れ隠しかと勘ぐってしまいそうな戸惑いもあれど、あれはやっぱり、ヒーローもの、というこの作品ならではのおとしまえなのかなと理解することにしました。
そして、理解できなくても、満足はできるもんだなと思った。
「スマステーション」インタビューでは、今後、もし映画をとるとしたら? という質問に対して、松本さんは「時代劇のドキュメンタリーとりたい。AVもおもしろそう」なんて答えていた。この映画をみて、ああそれすごく面白そうだなと思った。