AGURA BOYZから3曲

ねぼけまなこのブラウザまえで手を叩く。あざやかなイントロのギターとブイブイ鳴るベース、ボーカルに先導されて手を叩く、ささやかなカウント、名残をおしむようなアウトロの拍手まで、はじめてきいた「クラップ・ユア・ハンド」の印象はいまもその朝の空気とともに思い出せる。あえて、たとえるならジョニミッチェル「Big Yellow Taxi」をきいたときの、あの愉快な気分がその朝にはあった。
それから、「Brand New Rock and Roll」。酔いざめの水みたいに気持ちいいギターにのる言葉の、そのまっさらな感じと、終盤の宇宙みたいな混沌が好きで、ずいぶん繰り返してきいている。流れ星の音。右から左へ抜けてって、うすピンクいろの夕暮れに、犬が吠える。そんな風景を思ったりした。ろっくんろーる。
そして新作にして大作、kakaneko(id:KaKa)さんの朗読とAGURA BOYZのコラボレーション「幸福な王子様」が、またすばらしいのです。

たとえば、言葉や音や色が、降りてくる、感じ。「降る」、というか、音が二重に「鳴る」感じというか。薄暗がりの台所から、お勝手口開けて、緑の、鬱蒼とした緑色が、目に飛び込んでくる前の眩しさみたいな、再会はあるし、それがいつでも来てくれるものではないこともわかっているのだけど、それをどう使えば良いかわからないとき、わたしはしんとした気持ちになる。すこしがっかりして、すこし恥ずかしいような。
そして、降りてきた言葉を、見つけた音を、磨くことのできるひと、ふさわしい場所にはめ込むことができるものをみると、うらやましい気持ちにひきずられつつ、うれしく思う。たとえばこの、「幸福な王子様」のように。

i-podにいれた「幸福の王子様」を聞きながら、私は小学生のころの、道徳の時間を思い出す。ストーブの前の席で、ねむたくなりながら、私はこの王子のことあんまり好きじゃなかった。でも、今聞こえてくるこの物語で、王子とツバメはお互いを思いやる。そんな苦しい声で、ツバメは王子に別れを告げる。ぐぐぐぐ、と物語に引き込まれたところで、かえってくるギター。それは王子とツバメが、あたたかいきもちになっていたときの記憶で。たとえばこの曲での音楽は、ブライアン・イーノの「Discreet Music」を聞いているときのように、物語と1つになって「潜って」いたけれど、そのかえってくるギターが鳴る、その瞬間に、情景を呼び出すスイッチとして立つ。
そして、わたしはその声と音楽にたすけられて、いまやっとすなおな気持ちで、王子とツバメの幸福を祈れるような気持ちがしているのです。
開きっぱなしの教科書から、エジプトへ、その背中を見送るような気分で、手を叩く。

音源へ

今回は特にお気に入りの3曲を、せんえつながらご紹介しましたが、AGURA BOYZには他にもすばらしい音源がたくさんありますので、ざくざく聞いてみるのは楽しいと思います。とはいえ、わたしも全部でメンバーは何人なのかとか、JUSCOがつくのが正式名称なのか、とか、わからないことがまだまだたくさんあるのですが。
「クラップ・ユア・ハンド」
「Brand New Rock and Roll」
「幸福の王子」

いつも楽しませてもらっていることへの感謝と、今後の活動への期待をこめて!