ドッグ・バイト・ドッグ

ichinics2007-08-26
監督:ソイ・チェン
人が人であるとはどういうことなのか。とか、そういうことを考えられるようになったのは見始めてしばらく経った頃で、暗殺者として育てられた主人公バン(エディソン・チャン)の、ためらいのない暴力は、それほど自然な振る舞いとして映った。
もう一人の主人公である刑事ワイ(サム・リー)も、「ピンポン」の頃のこぎれいさとはうってかわって、常軌を逸していく過程を絶妙な存在感で演じていたと思う。過剰に思える演技も、暴力シーンとのバランスがよく、終始振り切れてる感じがいい。
人を殺す、という行為に対する「抵抗」。警察官と暗殺者という二人の主人公の「抵抗」が反比例していく様を描く、この映画の主題もシンプルに伝わってきたし、特に乱闘、暴力の描き方には、重力が感じられた。ただしかなり激しくグロいと思われるだろう場面もあるので、そういうの苦手な人にはおすすめしません(ちなみに私が見てるとき、途中退席してる人もいた)。
そもそも、展開が多少強引であったり、突然メロドラマ調になったりするのは香港映画のおきまりというか、むしろ魅力なので気にならないんだけど、ただ終盤、カンボジアに移ってからの描写とラストは、多少緩いかなと思った。それは、個人的に、その「抵抗」の「理由」の描き方が、いかにもすぎると感じられたからだろう。
ただ、その倫理の枠組みのようなものが外れていく様の描き方が、この映画のつんのめるような勢いになっていて、説得力があった。面白かったです。