ピアノと虹

むかしから、ピアノの音に弱い。
ひなたの、なつかしくて遠くて近い、あの感じは、どういうピアノからどんなタイミングで聞こえてくるのかわからないけど、今日聴いたあのピアノは、たしかに眉間に触れるような「あの感じ」で、遠いのに近かった。
それは例えば、親密さのようなものだと思う。距離や時間じゃなくて、ただその音だけがつなぐ風景のようなもの。
いくつもあった、その場をつないで透かして映る、虹のようなもの。
窓の外を流れる緑色を、きれいだと思ったのに言えなかった、いつかの午後のようで、目を閉じると少し滲む。