「In Rainbows」/Radiohead


英語が不得意なせいで及び腰になっていたRadioheadの新譜だけれど、idiotapeさんの丁寧な解説によってどうにか購入にありつけました。ほんとうにありがとうございます…! その解説はこちら。

慣性のある生活 - Radiohead "In Rainbows"に関するマンボージャンボーと、購入方法

なぜ英語が不得意で及び腰になるかというと、「In Rainbows」は、今のところダウンロードのみで販売されていて、クレジットカードの認証やらなにやら、個人情報をいまいち自信のないまま書き込むのにためらいがあったからです。でもidiotapeさんの解説を読めばわたしでもできた!
クレジットカードで支払い完了後にダウンロード用のアドレスが送られてくるわけですが、それが1回しか有効じゃないっぽいと書いてあったので、挙動不審な私のmacではなく、弟のハイスペック(たぶん)PCでなにやらして、とかでやっと先ほど自分のPCのiTunesにコピーを開始しました。

よしよしこれで安心、なんてのんびり構えていたところに1曲めが流れ出し、思わず背筋が伸びる。ああ、Radiohead が帰ってきた、とか思う。というより、自分の中に、Radiohead を好きな気持ちが、帰ってきたと思った。
もちろん、嫌いになったわけじゃないし、忘れていたわけじゃない。ただ、トムのソロ、「THE ERASER」を聴いたとき(id:ichinics:20060706:p1/id:ichinics:20061221:p1)に、正直にいえば少しばかり、その気持ちが欠けてしまったところがあった。あのアルバムのことを、私は『「KID A」から「Amnesiac」へと続いた時期のアウトテイクのような印象』、と書いたけれど、それ以上に、Radioheadというバンドでなければできないことを、浮き彫りにしたアルバムだったように感じ、さみしくなった。これはもちろん『THE ERASER』という作品の善し悪しについてではなく、自分は結局、トムの声がとても好きだけど、それが Radiohead というバンドの音にのってこそ好きなのだと、確認して、物足りなく感じてしまった。それが残念だったのだ。
しかし結果的には、一年以上も、それがRadioheadの最後の印象になってしまったわけで、気持ちが若干萎えてしまっていた。というのが正直なところだ。

しかし結局、Radiohead は十分に期待に応えてくれた、と思う。ああ、偉そうだな。でも、あの「THE ERASER」はやはり、エレクトロニカへの清算であり、次のステップに進むために、必要なことだったのだろう、とこのアルバムを聴いて思うことができた。常に革新的な音を、という期待に応えようとしてきたのは、Radiohead のプライドなのかもしれない。ただ、このアルバムで、その方向性は少し趣をかえたのではないだろうか。
In Rainbows」から聞こえるのは、もちろん『Hail to the Thief』の後にある音で、なおかつ「パブロ・ハニー」から続く彼等の、歴史を感じさせる音だ。これだけ長い間、第一線で一度のメンバーチェンジもなく続いているバンドは稀だよなあということを思い、少し感傷的な気分にもなる。ただ、正直にいえば、私にとって「KIDA」以降、Radiohead の作る音楽は、どこかもろさを感じるところがあった。ある糸を引いた瞬間にばらばらになってしまうんじゃないかと思うような、不安感が、魅力だったといえばそうなのだけど。
しかし、「In Rainbows」には、やっぱこれだよ、と思わせるような「バンド」の空気がある。つまり、ここにきてやっと、Radiohead はシーンとかそういうこと関係なしに、自分達の音の「個性」を認めたのではないか。そんなことを思わせる力強い音だった。
そして、それができる環境を作るという意味でも、このダウンロード販売という方法は、彼ららしいといえるのかもしれません。

長々と思い入れ過多な文を書いてしまいましたが、要約すると、とても気に入ったということです。よかった。