昔話/バレンタイン

昼休みに町へでると、明日はバレンタインデーっていうことで道ばたでチョコレートの試食とかやっていた。私も一粒もらって食べる。チョコレートはおいしい。とてもおいしい。
でも、バレンタインの華といえばやっぱりチョコレートよりも告白ですよね!
私自身はバレンタインに告白、って小学校のときの1回しかしたことなくて、そんときもさんざん迷ったあげく無記名でポスト投函…ていう…今思えば非常に、相手側にとってはしんどいっていうか気味の悪い感じのことしかしたことがありません(ごめんなさい…(黒歴史))。
中学、高校は女子校だったので、バレンタインといえば友達同士で手作り菓子交換会だった。トリュフとかブラウニーとかガトーショコラとか、定番な感じなのを覚えたのはその頃だ。1人1種類を持ち寄って、それを6人くらいで交換すると一気に6種類になる。あれは、なんかすごい得した気分だったな。だからわりとバレンタインは楽しみなイベントだった。
でも、欲をいえば、一生に一度くらい、毎朝電車で会う人とかに一目惚れして渡したりとかそういうことしてみたかった。なー、なんて、もしかしたらそれも21世紀の現代ではちょっと…って話になってしまうのかもしれないですが(東京砂漠)、私が高校生だった当時は、2月14日の朝になれば、わりとそういった光景を目にする事ができた。
そのなかには私の友達Yちゃんの告白もあった。
相手は毎朝K線で一緒になる、男子校の子だったと思う。Yちゃんはいつもすぐに彼の姿を見つけた。「いた!」と言われれば「ほんとだ!」とか相づちをうちつつ、じつは私は満員電車だし、目が悪いしでちゃんと顔認識できてなかったんだけど、まあYちゃんは好きだから見つけられるんだろうねえなんて感心してもいた。そんな朝が、たぶん半年くらいは続いたと思う。
そして高校1年のおわり。バレンタインに告白する!ってYちゃんが宣言してからは大騒ぎだった。みんなで材料買いに行って、Aちゃんちに泊まり込んでチョコ作ったり、Aちゃんの弟に試食させたり、ラッピング練習したりなんだかんだ、でももちろんカードだけはYちゃんひとりで書いた。
14日の朝、私やAちゃんはいつもどおりの電車にのったけど、Yちゃんだけはいつも彼の乗り込んでくる駅へ先に向かっていた。その駅を過ぎるとき、私たちはどうにかして、ホームにいるはずの2人を見つけようとしたけど、満員電車の中からは難しかった。ただ、学校のある駅でおりるとYちゃんはいなくて、朝礼終わって一限始まる前の、ぎりぎりに教室入ってきたんだった。
その日はもう授業どころじゃなかった。というか、テストだったような気もするんだけどよく覚えてない。どうやって渡したのかとか、何しゃべったのかとか、とにかく1日中その話ばっかりしていた。

でも結局、Yちゃんは彼とはつきあわなかった。確か1回デートして、それっきりだった気がする。それについては、まあ、話をしてみなきゃわからないことのが多いしね、と思う。
そんでも、私たちはあの日のYちゃんの勇姿を目撃したような気分になっていて、要するにそれはまるで、試合(Yちゃんはダンス部だった)で活躍するYちゃんを応援するのと、同じような感覚だった。
そんなYちゃんが、この前の連休に結納をしたというお知らせが先日きた。Aちゃんは今外国に住んでいるのだけど、式には帰国するといっていた。2人に会うのはずいぶん久しぶりだけど、あの時の話を2人が覚えてたらいいなーとか、思う。