思い出せなかった話/「ルート225」志村貴子

シリウスで連載されていた志村貴子さんの新作(原作は藤野千夜さん)。
主人公の姉弟は志村さん得意のキャラクターだし、マッチョはいいやつだし、SFだしで面白かったんですが、個人的にはこれ読みはじめて、すごくびっくりしたことに夢中になってしまった。それは、これがまさに、この日(id:ichinics:20060604:p2)に思い出せないって書いてた話だったからだ。

  • 「気の強い姉と、小学生の弟が、パラレルワールドのような場所から出られなくなってしまうお話」で、二人が電話ボックスから自宅に電話する場面だけが印象に残っている。(2006年6月4日)

弟は小学生じゃなかったけど、それ以外はまさにそのまんまだった。でも、これが2006年の日記、ということは、漫画の連載ははじまってないし、だとすると藤野さんの原作を読んだことがあったのかもしれないけど、漫画を読んでみてもやっぱり電話ボックスのシーン以外はまったく記憶に残っていなかった。なにより、思い出せない、と思っていたときに思い描いていた、あの映像はなんだったんだろう?(映画版もあるけど、これは確実に見ていない)
そして、もし「思い出せない」って日記に書いてなかったら、きっと思い出せなかったことすら覚えていないだろうな。それに、志村貴子さんの漫画は迷わず買う今じゃなかったら、思い出すきっかけだってなかったかもしれない。ってことは、もしかしたら「日記を書いた今」がAだとすると「書かなかったA'」があるのかもしれない…、原作を読まなかったAから、いつのまにか読んでいたA'にきてしまったのかもしれない。
…なんてことをしばらく考えたりするのも楽しかった。すごく個人的な驚きなんだけど、あらためて、日記って面白いなーと思う。

ルート225 (シリウスKC)

ルート225 (シリウスKC)