おやすみプンプン3巻/浅野いにお

おやすみプンプン 3 (ヤングサンデーコミックス)

おやすみプンプン 3 (ヤングサンデーコミックス)

浅野さんの漫画に対して、私は「ソラニン」で、少しだけ居心地が悪くなってしまい、構えてたところがあるんだけど、あそこにあった面映いような心情描写はこの「おやすみプンプン」にはもうない、ような気がする。語り口と裏腹に、描かれていることがどんどん切実になっていって息苦しいくらいだ。
おやすみプンプン」は、一見するとそのビジュアルもあって、ちょっとあざとい、奇抜な漫画に感じられるかもしれない。しかしプンプンの造形は、見た目のインパクトだけでなく、物語の駆動力として、感情描写の手段として、すばらしく機能している、と思える。シンプルな線で描かれるプンプンの、この表情の豊かさを見てよ…!とページ開いていろんな人に見せてまわりたいくらいだ。漫画ってすげええ!
しかも、なんか絵が、どんどんうまくなってる。24話と25話の間に流れるこの時間の描写とか。「虹ヶ原ホログラフ」から明らかに変化した気がするんだけど、あそこで何かがあったんだろうな、とかいろいろ考えてしまう。わくわくする。

人はみんな平等や平和って言葉が好きだけど、
僕から言わせてもらえば、そんなの敗北者たちの宗教みたいなものだよ。
(略)
人と人が完全に同列になり個という意味を捨てた時、
本当の意味での生命の喜びを感じることができると思うかい?
【28話】

ああ! 言葉と気持ちがどんどん離れてくこの不安、イライラ、焦り、それらがぜんぶプンプンの表情に現れてる。
正直なところ、この勢いが3巻まで続くと思ってなかった。でも興奮して読み終えて、もう全力で楽しみにするつもりです。えらそうなことたくさん書いちゃったけど、続きが楽しみな漫画があるってのは、ほんとーに幸せだ。
1巻感想 → http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20070805/p1
2巻感想 → http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20080110/p1