JUNO

監督:ジェイソン・ライトマン
「JUNO」やっと見てきました。やーよかった、という確かな後味はあるんだけど、じゃあどこがって聞かれるとちょっとうまくいえない映画だった。
【以下、ラストに触れています】

映画は、16歳のジュノが好奇心からちょっといいなと思っていた友達の男の子、ブリーカーとセックスして、妊娠してしまう…というところから物語が始まります。なんて聞くと、10代の妊娠!奔放な性!とかそんなテーマなのかなとか思うけど、ちょっと違う。
確かに、ジュノも最初は中絶しか考えてないし、その後、赤ちゃんをもらってくれる人を探すことになる展開も、「軽い」といえば軽い。「まだ高校生だから育てられない」と最初からジュノは結論していて、それに両親も協力する。
なんだかあっさりしてるなあ、と思ったけど、でも、いまいち現実感がわかなくたって、否応なくおなかは大きくなる。そんな中、両親と友達の態度には、応援すると決めたからには100パーセント応援する、というような心強さがあった。そんでだんだんと、ジュノたちはけして「軽い」んじゃなく、率直なだけなのだと感じられるようになった。いくらきれいごとを言ったって、反省してみせたって、今のこの状況が好転するわけじゃないんだ確かに。(もちろんきれいごとが必要なときもあるけれど)

ジュノが見つけたお腹の子どものもらい手となる夫婦とのやりとりがまた面白い。作曲家の夫マークと、美人で仕事もできそうな妻ヴァネッサは、一見理想的な夫婦に見えるのだけど、パンク好きのジュノとマークが意気投合したことで、関係がずれていく。
正直、モットザフープルの曲がかかるあのシーンの展開はないだろーと思ったけど(あり得ないと言う意味ではない)、ショッピングセンターでジュノのお腹を触らせてもらったヴァネッサのうれしそうな顔を思い出すと、サウンドガーデンTシャツをくさすあの場面には胸のすくような思いがした(ただ自分のことを思うと胸が痛いので複雑)。ここは、「女って現実的だよねー」というより、彼女は彼女の、子どもが欲しいという思いに忠実だっただけだと思う。
そんで、やっぱり妊娠て特別なことだよなあ、というあたかも「予想されそうな」ことを素直に思った。そして、映画の登場人物たちもまた、そうなんじゃないかと思えた。

ところで、お腹の子の父親であるところのブリーカーは、最初から蚊帳の外にいる。「あんたの親には内緒にしといてあげるから」「なんとかするから大丈夫」なんてジュノは強がってみせるが、途中でイライラをぶつけてしまう。苦労するのはわたしだけ、とジュノは言う。たしかにそうなんだけど、ブリーカーには関わる隙もなかった。
なので特にブリーカーに悪印象はないんだけど、でも、ラストにまたブリーカーが出てくるとは思ってなかった。そこが、「やーよかった」の後に「でも…」と言いたくなってしまうところだ。
たぶん妊娠騒動があってようやくブリーカーの良さに気付いた、というラストだった気がするけど、そこはもう少し納得させてほしいなーとか思ったけど、まあジュノが好きならいいよね! とも思いました。ラスト近くの友達の笑顔がよかったです!