Radiohead があった


好きなもの、夢中だったものから、少しずつ気持ちが離れて行くのはさみしい。けして嫌いになった訳ではないし、興味がなくなったわけでもないんだけど、「どうしようもなく」という部分だけ、ごっそり蒸発してしまったようで、たぶんそれは戻ってこない。
自分の気持ちなのに、どうにもならないのは、たぶん好きになるときも同じだ。そしてそのどうしようもなさは、得ようとして得られるものでもないから、せめて渦中にいるときくらいは夢中でいたいと、最近つよく思うようになった。
木曜日に、Radiohead のライブを見ながら、私はその音楽にまつわる思い出のことを考えていた。我ながら感傷的だなと思うけれど、あの頃は確かに、どうしようもなさの中にいて、好きなバンドはと聞かれれば、迷うことなく「Radiohead」と答えていた。
「the Bends」のツアーのときはなぜか整理番号がなくて、リキッドのあの長い階段に、座り込んで開場を待った。途中、スタッフの人がきて、リクエストを聞いてくれて、迷わず「When I’m like this」と答えたこととか、それが演奏された瞬間の泡立つ感じとか。
「OK computer」が出た時、散々「ラジオ頭ねえ…」とかいってバカにしてた先輩が「いまいちだったらあげよーと思ったんだけど、すごいよくてさ」と言ってるの聞いて、急いで買って帰ったこととか、その後の来日公演はその先輩と行ったんだったとか。
「KID A」が出た時はCD屋で働いてて、入荷してすぐに店のプレイヤーでかけて、タイトル曲のイントロ聞いた瞬間は階段にいたの覚えてる。皮膚の内側まで響くみたいな低音がやわらかくて、あーわたしこの曲好きだなと、その音聞いてすぐに思った。
「Amnesiac」出た後が横浜アリーナだったかな。初めて椅子ある席で見て、なんか遠いなぁと思った。「Talk show host」を何度かやり直していたのが印象的で、あのとき一緒に行った人は私のいちばんの友達だった。元気にしてるかな。とか。
「Hail to the Thief」のライブは後のメッセ単独より、サマソニの方が印象に残っている。隣の席のイギリス人の女の子は、友達とはぐれて1人だっていってた。でもこれを見に来たから、と、そのまま私たちと並んで開演を待った。マリンスタジアムで、夜で、青っぽい光が拡散してくような気がした。「KID A」が演奏された瞬間、そして「A Wolf at the door」の感情の固まりのようなあの声と、最後の「Creep」のことは忘れないだろう。帰り道、回りにいるひとみんなが興奮してた。携帯電話で誰かに報告する声があちこちにあった。「Creep」はほんと、特別な曲なんだなと思った。

そんな風に、Radiohead にまつわる様々な出来事が、今回のライブを見ながら思い返された。あの頃持ってたものの多くはなくしてしまったけど、あの頃私が大切にしていた曲は、いまもこうして演奏されている。続くっていうのはすごいことだ。そして続いていてくれることが、ほんとうに嬉しい。

個人的ベスト5

Killer Cars
black star
KID A
Fog
A Wolf at the door
今日の気分だけど、1位だけは不動。もう1回ライブでききたい。

http://jp.youtube.com/watch?v=4inS8uNxmsE