ニカセトラ/二階堂和美

ニカセトラ

ニカセトラ

耳になじんでいるはずの曲も、この人が歌うとなんでこんなに瑞々しいんだろう、と思う。
人によって表情が違うみたいに、言葉が違うように、ここにあるのはすっかりニカさんの歌だ。ニカさんの目を、声を通して歌われる歌には、例えば子どもの頃の写真を見るときのような、なつかしくて切ないあたたかさがある。
それはきっとニカさんがここで歌われている曲たちをずっと好きでいたからなんだろうし、こんなふうに歌い続けられるなんて、すごく幸せな曲たちだと思う。
「話しかけたかった」は大好きな曲だけど、イントロのギターの触感からしてたまらないし、「夏のお嬢さん」の、ニカさん独特のハミング(?)とか、聴いてると思わず足取りも軽くなるくらい楽しい。
松任谷由実さんの「A HAPPY NEW YEAR」は、私このアルバムではじめて聴いたんですけど、これがもうぎゅうっとした気持ちになるくらい切ない。インタビューを読むと二階堂さん自身も「半泣きで歌ってました(笑)」って書いてあって、しかも外で録ったっていう情景を思い描いてみると、もう外は雪が降ってるんじゃないかって気分だ。年末年始の、あのしんとした感じ。
そしてラストを飾るのは「一年生」(原曲は「思い出のアルバム」)このシンプルな演奏と、のびのびした声が、けして力んでる感じはないのにすごく心強い。ひらひらと手招きされてるみたいな、うきうきした気分のままアルバムは幕を閉じ、私はまた再生ボタンを押してしまうのでした。
このアルバムが聴けてほんとうに嬉しい。