空から先生が降ってくる

【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説・漫画を募集します。
条件は「空から女の子が降ってくること」です。要約すると「空から女の子が降ってくる」としか言いようのない話であれば、それ以外の点は自由です。
http://q.hatena.ne.jp/1231366704

面白そうだったので書いてみました。いいわけいっぱいしたいの堪えてあげてみます。いろいろ申し訳ありません。
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今日から期末試験だというのに、オカダは今日も隣でウトウトしている。
「ねえちょっとは教科書開くとかしたらどうなの」と声をかけても、
「教科書開いて空から先生が降ってくるわけでもあるまいし」などとわけのわからないことをいっている。
「おれ、空から降ってきた先生に家庭教師してもらうんだ」
「なにそれ」
「先生のためならがんばれる気がする…」
窓の外を流れる凸凹川はまるで両腕を広げるかのごとくなだらかに寝そべっている。ここから凸川と凹川に別れる中州状のエリアに私たちが通う高校があった。
そういえば、高校入学時もオカダは、曲がり角でパンをくわえた女の子とぶつかるのが目標だとか言っていた。
このまんまじゃ同じ大学に行くのは無理かもしれないなぁ、と私はひとりため息をついた。いっそ先生でもなんでも降ってきて、オカダにやる気をださせてくれればいいのに。なんかシャクだけど、話はそれからだ。
「おれこのまま電車のっててもいいかな」
ねぼけ眼のオカダがいった。
「いいわけないでしょ」
ドアが閉まりかけるすれすれで、オカダをひっぱって駅に降りる。駅員にジロリとにらまれた私は、肩をすくめてオカダの肩をはたいた。

その日の科学のテスト中、狭い校内に警報が鳴り響いた。
「隕石が近づいています。早急に避難してください」
椅子や机が転がる音とともに、クラスメイトたちはいっせいに校門へとなだれていく。その波をかきわけるようにして、私はオカダのクラスへと走った。案の定、オカダは窓際にたって、まだ何も見えない空を見据えていた。
「逃げよう」
そう声をかけると、オカダは首を振った。
「きっと先生だよ」
「ばか…!そんなわけないでしょ」
「いや、おれにはわかる!」
私はオカダを憎からず思ってはいたが、自分の命が大事だったので結局逃げることにした。
「早く逃げなよ!」
私の声が届いたかどうかわからない。避難所にもオカダの姿はなかった。

隕石と呼ばれていたものが視認できる距離まで近づいたとき、私にはそれが巨大な人形をしているように見えた。あれはほんとうに、オカダの先生なのかもしれない。
先生は燃えたまま、地上へ落ちた。大きな振動とともに轟音が鳴り響き、後には巨大な人型の干潟ができた。

「そこに水がたまってできたのがこの凸凹川です」
「え、そんでおれどうなったの?」
「もちろんつぶれて死んだ」
「ひどい…つかおれをおいて逃げるのがひどい!」
「先生を待つとか言って残ったのオカダじゃん」
「まあ…でもおまえがおれのこと憎からず思ってるのはわかったよ」
「は…?」
「しょうがないからちょっとはがんばるかな…」
「ちょ…!なにいってんの」
そういって追いかけようとしたところでオカダが急にたちどまり、私は顔をしたたか打った。
「なんなの…」
そういって顔をあげると、オカダの向こうにパンをくわえた女の子がたちつくしているのが見えた。
もういやだ。
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