雪、茶色、アイロン

昼休みの喫茶店はいつも満員御礼で、今日もまた私含めて数人、カップもったまま立って席があくのを待っていた。並んだりはしていないんだけどなんとなく、自分より先に来た人へどうぞどうぞという雰囲気ができている。しばらくして、奥の席があいたとき、待っていた3人の中で一番後に来たおじさんが、どちらにともなく「あきましたよ」と言い、私ともう1人が顔を見合わせ、私は「どうぞ」をもらった。こういうとき、なんとなくだけど近しい気分になるのはなんでなんだろう。
席へ向かう途中、残った2人が「雪ですね」と話しはじめるのを背中で聞いた。

幼い頃、祖母は私を称して「茶色の似合わん子」と言っていたそうだ。その話を母さんに聞いたのは、私が春休みの(はじめての)バイト代で買ってきた茶色の服が、あまりにも似合わなくて途方に暮れていた時の事で、それから私は長い事、茶色を目の敵にしていたはずだった。
しかし昨夜、洗濯物をしまっていたときに、うす茶からこげ茶まで、いつのまにか茶色の服が随分増えてることに気がついた。私はいったい、いつから私は茶色絶ちをやめたんだっけ。
そういえば、昔はピンクとか着てたなと思う。21の誕生日にピンクのTシャツきて写ってる写真は、自分が写ってる写真なのに珍しく気に入っていた。でも、その写真ももうなくしちゃったし、今はもうピンクは選ばないだろうなと思う。でも、いつのまにか茶系も違和感なくなってたみたいに、好きな色が似合うようになればいいのにとか思う。

でもいつも一番に思うのは、白いシャツが似合うようになりたいということだ。
そして、似合うも似合わないも、私があまりシャツを買わないのはアイロン掛けがめんどくさいからだ。
風呂上がりにジュース飲みながらぼんやり通販番組を見ていて、ハンガーに吊るしながらシャツにスチームで!アイロンがけらくらく!プリーツも!とかやってるのを、固唾をのんで見守り、発表された五千円という値段がずっと頭に浮かんでいるのはのはたぶんそういう理由。

たまに、書きたいと思いついたことを携帯にメモしたりもするけど、それらは後になって読み返しても、時化たクッキーみたいにそそらないものになっていることがほとんどだ。もちろん、また気分がめぐってくることもあるので、たまに、しれっと数ヶ月前の日記を書いていたりもするけど、気分だけはいつも今なのが日記書くののおもしろいところ。