オテル モル/栗田有起

オテル モル (集英社文庫)

オテル モル (集英社文庫)

いつもだいたい眠いので、眠たさを瞬時に断ち切る方法があればなと常々思っているくらいなのだけど、眠りに落ちる瞬間の、あのぐっと落ちる感じは何より気持ちが良いと思う。
この本はまさに、その気持ちよさのかたまりのようだった。
なにしろ、主人公が働くことになるホテル、「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」は眠るために特別に設えられたホテルなのだ。
主人公はまれにみる誘眠顔ということで、オテル・モルに採用され、戸惑いつつもそこで働くことにやりがいを見出しはじめる。で、とくに事件が起こるわけでもなく、その一風変わったホテルの謎があかされるわけでもなく物語は終わるのだけど、読み終えたあとは、いつもよりちょっと、眠ることが特別に思えたりした。
私は日向でうたたねするのが好きなので、ぐっすり眠るために作られたオテル モルはたぶん私の眠りたい場所とはちょっと違うのだけど、この主人公に見送られて眠るのはとても魅力的に思えた。
オテル モルのイメージはあの「ドルフィンホテル」に近くて、解説を書いているのが柴田元幸さんっていうのもしっくりきた。とても読み心地の良い本でした。
この人のほかの作品も読んでみたいです。貸してくれた友達に感謝!