「蒼穹の昴」/浅田次郎

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

おすすめしてもらって読んだんですが、すごく面白かったー! 文庫版だと全4巻で、3巻まで買ってたんだけど、3巻読み終わった時点ですぐ自転車乗って本屋行ったくらい。浅田次郎の小説を読むのは初めてだし、歴史ものの小説にもほとんど手をつけたことがなかったんですが、ほんともったいなかったなーって気持ちになりました。

物語は中国清朝末期、貧しい少年、春児が占い師のおばあさんに『遠からず都に上り、紫禁城の奥深くおわします帝のお側近くに使えることとなろう』という予言を受けるところから始まります。守護星は昴、という言葉に沸き立つ気持ちの半分は不安でもあるんだけど、この言葉があるからこそ、物語がはじまるんだってところにぐっときます。前にちょっと書いたけど『生まれてこの方、ついぞ知らずにいた「希望」という代物が、少年を怯えさせたのだった』ってところ。この「希望」を知ることで、未来が「ある」ものになったのだなと思います。
その春児を都に連れて行くきっかけをつくる義兄弟の史了もまた、同じ占い師の予言を受けて進士に合格する。当て馬だった史了の合格がわかるくだりなどは、読んでいて本当にわくわくしました。
物語には、この2人がそれぞれ歩むことになる運命と清朝が終わっていく様子とが絡み合いながらテンポよく描かれていて、もったいないと思いつつ、あっという間に読み終えてしまいました。

この物語における当時の絶対的権力者「西太后」像は、よく言われる「悪女」のイメージからはかけ離れていました。物語後半での春児の台詞を見ても、この「西太后」像が作者の描きたかったポイントのひとつなのかなと思う。
とはいえ、私は西太后が登場する物語といえば「ラストエンペラー」を見たことがあるくらいで史実には詳しくありません。だけど、この物語の魅力はやっぱり、西太后をはじめとしたすべての登場人物が生き生きと描かれているところにあると思います。
4巻読み終えてからこの時代のことを調べてみたら、見知った名前をあちこちに見つけることができて楽しい。

特に好きな場面は文庫版3巻の最後、第六章の六十。こういう努力が報われる場面に私はほんと弱い。
それとやっぱり六章の五十一、李鴻章が香港割譲の交渉に現れるとこがものすごくかっこよかった。ここで李鴻章が語る台詞が、物語と今を地続きにしていると思う。Wikipedia にのってた写真もイメージどおりでかっこよかった。
蒼穹の昴」には最近出た続編があるらしいので、そちらもいつか読んでみたいです。
あと、いま調べてたら来年ドラマ化の話があるんですね。ぜんぜん想像つかないけど、どうなるんだろうなー。
蒼穹の昴(2) (講談社文庫)

蒼穹の昴(2) (講談社文庫)

蒼穹の昴(3) (講談社文庫)

蒼穹の昴(3) (講談社文庫)

蒼穹の昴(4) (講談社文庫)

蒼穹の昴(4) (講談社文庫)